イギリスの学校を参観された先生の報告 (1)

先日、私が勤務する小学校に日本からお客さんがいらっしゃいました。大阪教育大学の柏木賀津子先生です。柏木先生がご自身のブログでその様子を報告してくださいました。(こちらです→イギリスの学校 (1) – Milton Keynes の山下桂世子先生を訪ねて )先生の視点がとても勉強になりますので、みなさんとシェアしたく、こちらで紹介させていただきます。1.5 日の訪問でしたが、4 回にわたって報告をしてくださっています。私のこのブログで、1回ずつ紹介させていただき、それに対して私の考えなど補足させていただきます。

先生のブログを拝見し、私も強く共感する部分がこちらです。

日本の英語活動では、教科化においてもスモールステップの指導なしに、いきなり読ませたり、写し書きをしていますが、これでは、その後の英語の素地が育たないのです。

日本の先生に知ってほしいのです。母語が英語の子どもたちでも、このようにしっかりした梯子で、やっと読めるようになる3年間以上のプロセスを。音と意味が上手く繋がってないまま、音への繊細さや、音と綴りの関係もほぼ教えないままの、写し書きの方法が、いかに理にかなっておらず、無茶なことになりそうなのか、既になっているのか。

豊かなコンテントのある言葉の指導とはどのようなものでしょうか。

大きく二つのことをおっしゃってくださっていますが、

①読み書きの基礎

②豊かなコンテントのある言葉の指導

について、私の考えを補足したいと思います。

①読み書きについて

私のブログやトレーニングを受講くださっている方にはお伝えしておりますが、子どもにとって自分で読み書きできるとうことがいかに大切なことなのか、ということです。ここしばらく、私の頭の中にずっとぐるぐると回っている言葉が「音」です。文字というのは私たちが発する言葉を留めるために生まれたものであり、文字から音ができたわけではありません。

シンセティック・フォニックスはまさに「音」を文字で表すということを行っているわけです。だから 44 音に対応する文字を最初に指導していくんですね。多くのフォニックスは「文字ありき」なのかな、ということをここしばらく感じています。読み書きの変遷を考えれば、それは納得がいくものですが、では「音」を、どうやって指導するのか、そもそも「音」とはどういうことなのかということをもっと深く考えなければと感じています。

これに関しては、「イギリスの学校を訪問された先生の報告 (3)」でお話します。

②豊かなコンテントのある言葉の指導

これはまさに「授業の在り方」のことだと思います。大きく 2 つに分けて考えていきます。

1) フォニックスの指導の在り方

シンセティック・フォニックスを導入してくださっている方の中で、

「せっかく文字と音の関係を知って、単語なら読めるのに、(We can! など) に出てくる文字を読もうとしないんです」

という話をされる方がいらっしゃいます。それは、フォニックス指導とその他の内容を全く切り離した授業になっているからなのではないかと思います。習ったことを活用できるようにしていくことは重要なことです。では、どのようにフォニックスと他の内容を絡ませて授業を行うか、というところに来ます。

まず、フォニックスはフォニックスで 15 分前後の授業は必要ですが、単語を読み書きするときには、今までに習った単語やその日の授業で登場する単語を使用することによって、フォニックスで習ったことが授業でも使えるということを子どもたちに体感させることです。それだけで、教科書やプリントなどを「読もう」とします。その逆もありで、フォニックスで習ったものは授業でどんどん使用していくことです。黒板の上に書く、「今日の目標」などもなるべく簡単な表現を使って、一緒に読む、ということも、常に文字がフォニックスと授業を行ったり来たりしているものだということです。

また、単語を読み書きさせて終わりになっていませんか?意味を伝えていかなければ、子どもたちは「単語に意味がある」ということを理解せずにただ「字面」だけを読むにとどまってしまいます。

これに関しても、「イギリスの学校を訪問された先生の報告 (3)」でお話します。

2)教科を考えた授業の在り方

私は日本で教員をしていたときに、授業は教科横断的に(というには語弊があるかもしれませんが)取り組んできました(運がよく、学校がそういう方向であった)。そのため、国語と算数、理科、社会、体育など授業がすべてある「テーマ」で統一し、子どもたちはどの授業でも「あ、理科でこれやった」算数で面積を行ったときに社会の授業で「面積はどうなんだろう」とすぐに結び付け、家庭学習でこれについて調べてくる子どもも少なくありませんでした。そうした授業を行うことで、子どもたちの学びに対する姿勢が育つことを私は学びました。これは、特別支援ではなおさら重要なことです。

今勤務しているイギリスの学校の授業は普通にこれがされているので、イギリスで働き始めた時は全く違和感ありませんでした。が、多くの先生が日本からいらっしゃると驚かれるところの一つがこのポイントです。

では、英語ではどうそれを生かしていくのか。以前から CLIL (Content and Language Integrated Learning) について興味があり、少しですが勉強していました。

CLIL には3つの目標

・内容に関する目標がことばの学習の目標で支えられている

・学習スキルの発達が内容とことばの学習目標の達成を支える

・内容の学習、ことばの学習、学習スキルの3つの目標

があり、

・Cognition

・Culture (Community)

・Content

・Communication

の 4C を学習者がうまく活用できるようになることだと理解しています。

参考文献:CLIL Content and Language Integrated Learning 新しい発想の授業 – 理科や社会を外国語で教える!?- 編著:笹島茂 三修社

でも、自分の中ではしっくりこなくて、なかなか実践しようとも思えなかったり、イマ―ジョン教育との違いがわからなかったりして、いまいち理解できなかったのです。それが、今回、柏木先生とお話していく中で、教科横断的授業に近いものだということが明確にわかり、そして、言語として具体的にその授業で子どもたちが習得する文を指導するということをお話していただき、納得しました。これなら、言語だ、と思ったわけです。ただし、ここに「豊かな」内容が必要なので、子どもの興味あること(発達段階に応じた)をベースにした授業づくりができたらいいな、と思っています。こちらに関してはまだまだ勉強です。

イギリスの学校を参観された先生の報告 (2) に続く。

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