イギリスの学校を参観された先生の報告 (3)
2019年1月に大阪教育大学の柏木賀津子先生が私が勤務する学校にいらして、授業を参観されたお話の第三回目です。
イギリスの学校 (3) – リテラシーと読み書き・シンセティック・フォニックス
過去二回のお話はこちらから。
第一回:イギリスの学校 (1) – Milton Keynes の山下桂世子先生を訪ねて
第二回:イギリスの学校 (2) – ストーリー創作への梯子
今回のお話は「シンセティック・フォニックス」。私のブログにお越しくださる方の多くの方は「ジョリーフォニックス」を検索していらっしゃるかと思いますが、ジョリーフォニックスというのは、シンセティック・フォニックスを教えるための Jolly Learning 社から出されているプログラム&教材の名前です。
シンセティック・フォニックスというのは「結合」フォニックスであり、何を結合するかというと、音と音の結合を意味します。ひらがなで「く」と「つ」を習うと、「くつ」と読めるようになります。これと同じで a, t と習うと、at と読めるようになります。
従来のフォニックスでは、26文字にそれぞれ音があり、その文字と音を26個全部習い、その後、単語を読む、という指導が取られていました。しかし、シンセティック・フォニックスでは、3つ文字の音を習えば、その3つをすぐにくっつけて単語として読む、という方法です。まるで日本の小学校1年生の子どもたちが「つ・く・し」と習ったら「つくし」と読むように。
シンセティック・フォニックスでは英語の音ということに重点を置き、44個の英語の音に対して、よく使う文字を指導します。そして、その後、同じ音だけれど違う綴り (44音を指導する際に、/ai/ の綴りは ie という綴りを指導し、その後、y, igh, i-e など異なる綴りを指導します (以下写真の一番右の水兵さんのイラスト部分)。
さて、柏木先生のレポートを読んでいただくとわかると思いますが、native の子どもたちでも、Thursday と一回で綴るのが難しいということ。読み書きを習って2年目の子どもでも、です。th という音と f の音が似ているので、fursday と綴る子どもや ur の音と ar の音もにているので、tharsday と綴る子もいます。中には、th の音を s と書いてしまう子もいます。
でも、私がここで声を大きくして言いたいのは、子どもたちは、自分が聞こえた音と知っている綴りを駆使して何とか綴ろうとするのです。私はここがとても大切だと思っているところです。従来、暗記法が取られていた英語圏では、音と文字の関係を指導していませんでした。その時は、Thursday と聞いても一文字も書けない子もいたのです。それが、音と文字の関係を習っているために、子どもたちは綴ろうとします。私は日本の子どもたちにもここを育ててあげたいと思っているのです。
柏木先生がいらした日は、私の勤務日ではないのでフォニックスの指導を見ていただいておりません。本当は参観していただいて、フィードバックをいただきたかったのですが。残念。
現在、私は3日間の勤務で、月曜日は Year 1 の一番サポートが必要なグループ、火曜日は Year 2 の中でサポートが必要な子どもたち、そして水曜日は Year 1 の中でもトップグループのフォニックスをそれぞれ担当しています。どのグループでも、子どもたちになるべく「印象に残る」授業を心がけています。子どもたちにとって印象に残る内容であれば、それが記憶として残っていきます。
例えば、今日は he, she, me, we のひっかけ単語を指導しました。e の部分を緑色で書くと、子どもたちは「どうして、e だけ別の色?」と聞きます。次に、それぞれの単語の横に絵を描きます。すると子どもたちは男の子だから、he! と言います。そこでつかさず、he は 「へ」 と言う?と聞くと、子どもたちは「違う!he!」と声をあげて言います。そこで、緑色に注目させると、「あ!それは /e/ じゃない!」と気づきます。ネイティブの子どもばかりのグループです。英語は流暢に話せますが、読むことや綴りを覚えることは別問題です。だからこそ、英語話者の子どもたちにもここまで丁寧に教えていく必要があります。こんな風にして、なるべく子どもたちに丸暗記ではなく、印象に残る授業を心がけています。
こちらのシートは日本人用に作ったものです。
今まで日本で行われてきた「丸暗記法」は一つの方法であり、まだ、別の方法があることを日本にいるみなさんに知っていただきたいと強く思っています。
「子どもが10個の単語を記憶したら、その10個しか読めない。でも、10個の文字の音を習ったら、3音の単語であれば350個、4音の単語なら4,326個、5音の単語なら21,650個の単語が読める (引用 Sue Lloyd のスピーチの中から Dr. Martin Kozloff のことば)」 とジョリーフォニックスの産みの親の Sue Lloyd さんもおっしゃっています。
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