フォニックスを指導する中で Whole Language の本はどう扱う?
これを書いている週に、ジョリーフォニックス総合トレーニングがありました。トレーニングでは「読み書きの変遷」について説明をします。ここでは詳細については触れませんが、いわゆる Look-and-Say や Whole Language という単語を丸暗記して覚える方法では、なかなかついていけない子どもたちがいるため、Phonics が指導されるようになりました。Phonics にはアメリカで主に教えられている Analytic Phonics、イギリスで指導されている Synthetic Phonics があります。ジョリーフォニックスはこの Synthetic Phonics にあたります。(次の図は同トレーニングで使用しているものです)
日本でも大人気の Oxford Reading Tree。このブログでも 2011 年に紹介しました。(次のリンクをクリックするとそれぞれの記事が別タブで開きます)
実は、これらの本、これを書いている現在(2024 年)では一切使用されなくなりました。
この ORT の本は、いわゆる Whole Language、話の流れから登場する単語を想像して、そして繰り返し同じ単語を読むことによって、お覚えていきましょう、というものです。the, climbed, what, go, no など、絵から推測して読む単語がほとんどです。しかし、イギリスでは現在、シンセティック・フォニックスで指導しており、子どもたちには「推測して単語を読むのではなく、文字を見てそれを音に変換して(decodind)、単語を読む」という指導をしています。そうすると、climbed は音通りに読んだら「クリムベドゥ」(あえてカタカナ表記しました)となり、なんのことかわかりません。このように、習った文字と音の関係で読めない単語ばかり子どもたちが読むとしたら・・・嫌になってしまいます。だって、習ったもので読もうとしても読めないんですから。
そこで、2024 年現在、多くのイギリスの小学校のリーディングで用いられている本は、その子のフォニックスの進度に合わせて読める Decodable Books(ディコーダブルブックス)です。Decodable Books とは、例えば、s, a, t, i, p, n だけ習ったのであれば、it, sit, sat, pat, pan, snap, pant など既習の綴り(文字)だけでできた本です。習った綴り(文字)が増えれば、どんどん読める単語も増え、Tricky Words というフォニックスのルールに沿っていない単語も少しずつ習ったものから順に登場してくるようになります。2 年間ほど学習すると、先程説明した Whole Language の本も読めるようになります。
例)以下のリンクをクリックすると外部サイトが別タブで開きます。
Oxford Reading Tree の Floppy’s Phonics Fiction
Read Write Inc. の Phonics Storybooks
Jolly Phonics の Decodable Readers
日本の小学校でも、国語だけでなく算数や生活科の教科書は 1 年生で学習するひらがなやカタカナ、漢字だけで読めるようになっていますよね?これが Decodable Books です。
日本の英語教室では、ORT の読本(Floppy’s Phonics 以外のもの)を使われているところも多いと思います。もしシンセティック・フォニックスで読み書きを指導していたら、その本は当分使えません。でも、学習を続ければかならず読める日が来ますので、それまで取っておいてくださいね。それを読めるようになることを目標にすることもできますので、決して無駄にはならないと思います。
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