2024 年秋 学校訪問
2024 年秋はいくつかの公立小学校を訪問してきました。学校では教員研修だけでなく、先生方が授業をしている様子を参観させていただくことができました。ここでは詳細はお伝えしませんが、指導者が
・「なんのために」ジョリーフォニックスを指導しているのかという目的意識を持つこと
・そして、それを達成するために「なに」をしなくてはならないのか、という具体的な指導内容を考えること
の両方がとても大切なのだということを再認識した授業でした。
今回の教員研修では、小学校の先生だけでなく中学校の先生方も参加してくださる自治体が多く、小中連携を考えて小学校卒業時までにどれくらい子どもたちに「読めるようになってほしいのか」ということから、まずは考えていただきました。
【小学校の先生の思い】
●短文が読める
例)What animal do you like? I like dogs.
●短文+α が読める
教科書の最後に何文が出てくるので、それを無理と思わずに読める
●意味が分からなくても、とりあえず読める!となってほしい
【中学校の先生の思い】
●初見の単語を見て、ローマ字読みから脱却した読みができていてほしい
最初にこういったことを小中ですり合わせておくことで、小学校ではどのような力をつけることを目的とするかが明確になっていきます。では、これを児童ができるようになるにはどうしたらいいのか?これを読んでいるみなさんも考えてみてください。
さて、教室には読むことが得意な子も苦手な子もいます。文字をすぐに認識できる子も難しい子もいます。文を読むということは、まず単語というかたまりを認識し、その中の文字(綴り)を認識し、それぞれを音に変換して、さらに音同士をくっつけて読む力が必要です。さらに、単語によっては読み方が複雑だったり(own と owl の ow の綴りは同じでも音は違いますね)、音の数が多く含まれていてくっつけて読むのが難しかったりするものもあります。(supercalifragilisticexpialidocious は造語ですが、これをすっと読める大人も少ないと思います)
私たち大人(英語の指導者)は小学校の教科書に出てくる単語を見ればある程度すらすら読めますが、子どもはそうではありません。短い単語であっても、読み方を学ばなければ読めないんです。では、読めないなら暗記すればいいのでは、と思うかもしれません。暗記するにもそもそもどう読んだらいいか分かりませんから、子どもたちは自分が学習したローマ字読みで読もうとしてしまいます。
単語を読むということは一朝一夕にできるわけではありません。英語には英語の音があって、その「42 音」とそれを表す「基本の綴り」を学ぶ必要があります。でもそれを一通り指導したところで、すぐに流暢に読めるようにはなりません。何事も復習や繰り返しが大切で、無理なく何度も読み書きを行っていくと徐々に慣れてきて、慣れてくると今度はそれが長期記憶に入り、少しずつすらすらと読める単語やチャンクが増えてくるようになるわけです。
国語でもひらがなから指導をはじめ、子どもたちは何度も同じことばを読んだり書いたりしながら、本当に少しずつ少しずつ流暢に読み書きできるようになっていきます。そして、習った文字だけを用いた教科書を使用しているので、子どもたちは自分の力で読めるようになっているのです。残念ながら、英語は初期に習う単語は不規則な綴りが多いため、授業で What color do you like? を習って、フレーズを丸暗記して言えるようになっても、決して読めるようになっているわけではありません。これは日本語で言ったら「如何様な色を好まれますか?」という難しい言い回しを未習の漢字交じりで一年生に丸暗記して言えるようにさせているのと同じだと言えます。
英語でも「読む」「書く」時間を確保し、4 年間かけて丁寧に読み書きの基礎を作っていく必要があることを実感しました。この期間で「42 音」とそれを表す「基本の綴り」(国語のひらがなにあたる部分)を学び、基本とは違う綴り方の「同音異綴り」(国語のカタカナや漢字にあたる部分)や特殊な読みになっている「ひっかけ単語」(国語では今日・一人などの単語にあたる部分)を身につけていきます。それと同時に繰り返し読み書きを行っていくことで定着していきます。これがジョリーフォニックスの指導で身につけられる部分です。
そしてそれを達成するために「なに」を行っていくのかについては、地域や学校によって異なってきます。どのようにして授業やカリキュラムに落とし込んでいくのかは人材や時間割なども考慮しながら子どもたちが力を付けていくために「なに」をしなければいけないのかを考えていくのだと思っています。
現状の教科書では、読み書きではなくコミュニケーションに重きを置いているので(もちろんそれも大事)、教科書内に(できれば 3 年生の Let’s Try から)丁寧に読み書きのステップを入れていったら、子どもたちが 6 年生終了時には自分の力で教科書が読めるようになって、そこで読めた単語やチャンクやフレーズを使ってコミュニケーションの幅も広くなっていくのにな…と感じています。
机の上に白とピンクのカードが
あるのがわかりますか?
白は規則通りに読める単語、
ピンクはひっかけ単語のカードです。
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