reception (4-5歳児)の子どもたちの評価方法
前回「5歳からの義務教育:イギリスは5歳から義務教育」で、イギリスの4,5歳児(レセプション)について伝えました。今回は、義務教育となった場合、目標や評価はどうしたらいいのか、という点に焦点を当てて、イギリスでのreception(4-5歳児)の子どもたちの学力をどのように評価していくのかお話したいと思います。
2012年に改訂された政府が出している Statutory Framework for the Early Years Foundation Stage (クリックすると、この概要がダウンロードできます。)では、Early Years Foundation (receptionのことです)における教育の重要性を強調し、4つの指針を掲げています。
• every child is a unique child, who is constantly learning and can be
resilient, capable, confident and self-assured;
• children learn to be strong and independent through positive
relationships;
• children learn and develop well in enabling environments, in which
their experiences respond to their individual needs and there is a strong
partnership between practitioners and parents and/or carers;
• children develop and learn in different ways and at different rates.
(太文字の部分は、下記月齢別発達度での項目基準になります)
(意訳:間違っていたらごめんなさい!
・子どもはどの子も、常に学び、立ち直る力や素晴らしい力を持っており、自信、そして自分自身を認めてあげられるものであり、唯一無二の存在である。
・子どもたちはポジティブな関係を通し、精神的強さや自主性を学ぶ。
・子どもたちは、自分の経験を各個人のニーズに応じてくれ、先生や両親、また自分を世話してくれる人たちとの強いきずなのあるそうした環境の中で学び、発達していく。
・子どもたちはそれぞれに違った方法でその子の速さで成長し、学んでいく。)
そして、以下の7項目をさらに細分化し(・・・で示した部分)、各月齢段階(0-11カ月、8-20カ月、16-26か月、22-36カ月、30-50カ月、40-60+カ月)ごとに各子どもを観察し、発達度を見ていきます。
- communication and language; コミュニケーションと言葉
・・・listening and attention, Understanding, Speaking (聞くことと注意力、理解、話すこと) - physical development; 身体発達
・・・moving and handling, Health and self-care (動きとモノのハンドリング、健康とセルフケア) - personal, social and emotional development; 人格、社会性、情緒の発達
・・・Making relationships, Self-confidence and self-awareness, Managing feeling and behaviour (関係を築くこと、自信を持ち、自分を知ること、感情と行動をコントロールすること) - literacy; 国語力
・・・Reading, Writing (読むこと、書くこと) - mathematics; 数学
・・・Numbers, Shapes/ space and measure (数、図形や空間や測量) - understanding the world; (周りの)世界についての理解
・・・People and communities, The world, Technology (人や地域、社会、テクノロジー) - expressive arts and design; 美術とデザイン
・・・Exploring and using media and materials, Being imaginative (メディアや材質について知ること、自らやろうとすること)
これが月齢ごとの習得度 (Literacy の Wiring) の表です (Development matters in the EYFS)。
この表から、
・子どもがどんな活動をしているのか (a unique child)
・大人がどんな関わり方を持っているのか (positive relationships)
・どんな環境に置かれているのか、大人が創る環境 (enabling environments)
に注目して、子どもたちがどれくらい習得できているのかを先生は見ていきます。また、右の表の左下の方が少し太字になっていますが、これが reception の子どもたちがLiteracy のWriting での目標となるのです。これに達するように先生たちは授業内容も考えていきます。
では、次にどうやって評価するかというと、こちらの写真を見てください。
これはLiteracy のWritingの評価です。黄色の文字を見ると、Writing 40-60 と書かれており、40-60カ月の子どものWritingに達成しているかどうかをこの作文では調べますよ、ということを意味しています。緑色と青色で書かれているのが何を基に評価しているかを示す項目です。これがすべて網羅できていれば、40-60カ月のレベルに達していると言えるのです。もしこのレベルに達していなければ、30-50カ月のレベルではどうなのか、さらに22-36か月のレベルではどうなのか、とさかのぼって、その子の発達段階を見ていきます。
こうした評価を上記7つの項目をさらに細分化した17項目に対して、全ての子どもに行うわけです。
これが、receptionでの評価の仕方です。各項目ごとに
◎発達具合
◎習得度
を評価していきます。通知表はこの表を簡単にしたもので、一年に一回、年度末に渡します。当然のことですが、絶対評価であり、親も子供がどの段階にいるかがわかるというわけです。
これをすることでもし特別な支援が必要な子がいれば、どのステージでの支援が必要なのか、何の支援が具体的に必要なのかがわかります。Early Intervention (幼児に対する教育活動) を重視しているイギリス政府が今、推し進めているのが、こうした評価なのです。
確かに、これをするようになり、私も自分がサポートしている子どもが何を必要としているのかをより具体的に知ることができるようになっています。そのため、子どもたちも的確なサポートを受けることができるようになっています。ただ、先生にしてみたら、いくらアシスタントがいても、30人の子どもにこの評価を行うというのは、かなりのハードワークなのではないかと感じます。
もし日本で5歳から義務教育が始まったら、こうした評価はどうするのか、大きな課題になるかと思います。また、施設はどうするのか、先生の免許はどうなるのか、一クラスの人数はどうするのか、アシスタントはどうするのか・・・課題はたくさんあります。提言が7月にまとめられるようなので、それに注目したいと思います。
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