5歳からの義務教育:イギリスは5歳から義務教育
「義務教育5歳から」検討 再生会議、実現には壁
2014/6/5 1:42 記事保存政府の教育再生実行会議が「6・3・3・4」制の学制改革に関する提言に向け、素案をまとめたことが4日、関係者への取材で分かった。義務教育の対象を5歳児に前倒しすることを検討するよう求める。だが、数千億円の財政支出が必要となり、実現の可能性は不透明だ。
素案には、小中一貫教育を実施する学校や、職業教育を専門とする高等教育機関の創設も盛り込んだ。提言は7月にまとめる予定で、文部科学省がその後、実現に必要な法改正や財源を検討するとみられる。
5歳児の教育は現在、幼稚園や保育所などが担っている。再生実行会議は現行制度を維持したまま、5歳児にかかる教育・保育費を無償化することを想定している。
現行では特例としている小中一貫教育を法律で「小中一貫教育学校」(仮称)として制度化することも提案。中学進学時に学校生活になじめない「中1ギャップ」を解消するため、市区町村の判断で小中の9年間を「5.4」など柔軟に区切れるようにする。これに伴い、小・中学校の区別なく教えられるよう教員免許制度を見直す。
また社会の各分野で即戦力となる人材の育成を目的に、専門学校などに代わる職業教育専門の高等教育機関を新たにつくることも盛り込む。
先日、この「5歳からの義務教育」に関する報道を聞いていたところ、その番組のアンケートによれば70%超の人が5歳の義務教育化を反対しているとのことでした。日本だったら、きっとそうなるだろうと、私も感じました。
イギリスでは5歳から義務教育が開始します(過去の記事⇒compulsory education:義務教育, Key stage とは)。が、現在、イギリスは満4歳の子どもの教育も無償で受けられるようになっています。そのため、5歳にならなくてもreceptionという学年に入ることができるので、実質、4歳からフルタイムの教育が開始するのです。
こんな早い時期から義務教育?と私も最初は驚きました。というのは、「義務教育」と聞くと、机に座って、授業を受けて、読み書き、そしていろんな勉強をするイメージだからです。確かに、授業を受け、読み書き、算数、理科や社会の勉強をします。しかし、勉強以外にも、いろいろな体験を通して学習することが多く、遊びもたくさんします。そして、先生たちは一人一人の子どもをじっくり観察し、一年かけてどれだけの成長がみられるかを細かに記録します。
例えば、英語の勉強では、子どもたちは床に座って、10分ほどお話を聞きます。そして、その後、全員で机に座って書く練習をすることもあれば、先生一人に付き4人前後の子どもが書く練習をすることもあります。この時間、他の子どもたちはいろいろなアクティビティ(塗り絵、水遊び、砂遊び、ごっご遊び、レゴなど)をしています。
また、体育の時間もきちんとあり、子どもたちが一人で着替えができるように練習をします。入学してきたばかりの4歳の子どもたちは、ほとんど自分で着替えられませんが、一年かけてちゃんと着替え、洋服もたためるようになっていきます。
その他にも、遊びの時間をしっかりと取ります。三輪車や車のおもちゃ、ボーリング、大きなブロック(とても軽いので当たってもけがをしない)など体全体を使う遊び、レゴ、小さな金づちとピン、紐通しなど手先を使う遊び、病院のお医者さんの格好などごっご遊び・・・。こうした遊びを通して、社会性や運動能力、想像力などを育てていきます。全員で手をつないで、輪になって遊ぶこともあります。
この4-5歳児の学校生活は、key stage1 に向けて、「座る」こと、「話を聞く」こと、そして集団生活に慣れさせることが基盤に置かれているように感じます。
key stage 1 の year 1 (5-6歳児)になると、机に座っている時間はもう少し増えます。勉強の時間もreceptionのころと比べるとぐっと増えます。ただ、個人での勉強というより、グループで勉強することが多いですね。日本のように一人一つずつ机がないので、どうしてもグループワークとなります。
ただ、これを日本で行うにはいろいろな問題が出てくると思います。まずは、先生の負担。一クラスを何人にするか、またアシスタントをつけることができるか、特別な支援が必要な子へのサポートはどうなるか。イギリスでは、一クラス30人ですが、担任のほかにティーチング・アシスタントが一クラスに一人ずついますが、receptionの場合は、ナーサリーナースと呼ばれる幼児教育を専門にしたアシスタントがつくのです。また、たいてい、receptionにはもう一人、サポートスタッフがついていることが多いです。(2クラスあれば、担任が各クラス一人、ナーサリーナースが各クラス一人、そしてフレキシブルに動けるナーサリーナースが一人、合計5人います。それに、特別な支援を必要とする子どもにもサポートがつきます。)
次に、目標と評価をどうするか。義務教育となれば、成績を出さなければいけないのではないか、というところも注目されるでしょう。しかし、こんな小さいうちから成績をつけることの是非が問われるでしょう。今後の日本の5歳義務教育化に関しては、ここも大きな争点になるのではないかと思います。イギリスはどうしているのか。これに関しては、次回、お話ししたいと思います。
コメントを残す