フィンランド学校見学 3. 教室の様子 – 特別支援はすべての子への支援 –

フィンランド学校見学の 3 回目。過去のお話はこちらから。

1.『フィンランド学校見学 1. ヘルシンキ~ユヴァスキュラ

2.『フィンランド学校見学 2. 教室の様子 – 構造化 –

今回見学させていただくにあたって特に注目していたのは以下の点で、この中の「教室の様子(構造化)」については前回お話しました。

・教室の様子(構造化)

・個への対応

・特別支援教育

・教材

・ICT

さて今回お話をしたいのが、前回に続いて「教室の様子」、「個への対応」、「特別支援教育」、といったところ。私が学校という場で子どもたちを指導していて常に感じるのが、特別支援を持った指導や取り組みはすべての子への支援になるということです。「特別支援」というと、本当に「特別」な支援が必要な子どもへの支援、と思いがちですが、実はそうではない。特に支援が必要でない子どもたちでも、ヘルプになることはたくさんあります。それが、今回のフィンランドの学校でどの教室でも見れた「道具」です。

前回引用したこの二つの写真。全く別の学校で学年も違う教室。しかし、同じものがある。それはなんでしょう?

はい、こちらです。

時計-タイマー。この赤い部分がタイマーになっています。先生が「5 分でこの問題を行いましょう」と伝えると同時に、5 分のところまで矢印を回します。これでタイマーオン。だんだん赤い部分が減っていき、0 になると、ポン、と音がお知らせ。日本でも似たようなものが売られています。

(↑クリックすると外部サイトへ進みます)

私がこれがいいと思うのは、アナログなところと、簡単に残り時間がわかるところ。そして、先生が簡単に使えるところ。

よく、ASD(自閉症スペクトラム障害)のある子にタイマーを使うことがありますが、これ、全員で共有すればよくないですか?教室にいて、私も「あと 3 分」「あと 1 分」など声を出してみなに知らせることがありますが、このタイマーがあれば、自分で確認できる。自立の一歩だと、私は思っています(大げさですかね?)。

次にこれ。

立って勉強する机 です。台の上に教科書やノートを載せて、子どもはオレンジ色の板の上に立って、身体を揺らしながら授業を受けています。子どもに聞いてみたら「これがあると、頭にはいってくるんだ。座っていると、あれこれ触ったり、集中できなかったりしたけど、立って勉強するようになって、勉強が楽しいよ」とのこと。1 クラスに 2 人、これを使っていました。

次はこれ。

教室の後ろにあったこの白い物体。そう、梯子。子どもが授業中に登れる梯子 だそうです。学校見学の日は登っている子はいませんでしたが、身体を動かしたいときに動かせるそうです。「じっとしていなさい」ではなく、身体を動かしたら頭もすっきりして、授業に集中できる子もいるんです。こういう場をみんなで共有できるのっていいですね。

こちらの写真の奥に見えているのは バランスボールに座って勉強できる机。これもいいなぁ。じっとしていたら、頭に入るわけではない!

これは ASD(自閉症スペクトラム障害)のある子の机。右にあるグレーのしきり!この形のものは初めて見ました。フェルトでできているため、安全。少しカーブになっているため、丸みがあるのがいいなぁ。この内側には、時間割や Now and Next ボードがありました(今は算数、次は国語、のように何をするのかを示すカード。見通しを持たせるために使用)。

前回も紹介しましたが、子どもの椅子も車輪(キャスター)がついている ため、音が出ないのがいい。日本だと、あのぎぃぎぃという音が苦手な子もいて、テニスボールをはかせている教室もありますね。(ちなみにイギリスはふつうの椅子を使用していますが、カーペットのため椅子を引く音はそれほど大きくありません。)でも、これだと先生の手間にもなるんですよね・・・。日本はどうしても先生がすべてやらないといけないので、負担が大きいのですが、こうして教室自体を誰にでもやさしい環境にしていけば、先生も楽になって、授業により集中できるのにな、と感じます。

教室の正面は すっきり しています。

これは目から入る情報を制限しているのかな、と感じました。壁面は子どもが学びにアクセスできるようにアルファベット表(フィンランド語)。

英語のアルファベット表はなんとジョリーフォニックスでした!

すっきりしていて、静かな教室。そして、誰もがアクセスできる道具。これが学びを支える環境づくりの第一歩だと感じました。

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