42 音を教える傍ら、次のステップにどのように進めていくか
ジョリーフォニックスを指導していくと、子どもたちは初見の単語を読むことができるようになります。しかし、それが流暢にできているかどうか、というと、多分「いいえ」でしょう。流暢な読みになるには相当な時間を要する、ということをまずはみなさん、覚悟しておいてくださいね。
そもそも流暢な読みとは何か、ということを話さなければならないのですが、これはまたの機会にしまして、今日はジョリーフォニックスを指導している人に知っておいてほしい「ジョリーフォニックスで42音を教える傍ら、次のステップにどのように進めていくか」ということについて話をしていきたいと思います。もちろん、年齢によってもどれくらい英語を習っているかによっても変わってきますが、今回の内容は小学校低学年(それ以前)でも中学生でも必要なことだと思いますので、参考にしていただければと思います。
目標を持とう
これは何もジョリーフォニックスを指導するときだけではありませんが、「この子たちにこれを教えることでどこまでの力を付けてほしいのか」と目標を決めることはとても大切です。また、英語指導全般の中で「フォニックス指導をどう位置付けるか」ということも重要になってきます。
私自身はフォニックスを指導する目的として、Learning to read から Reading to learn への移行(「文字面を読むこと」から「内容理解」に移行)があり、将来的に子どもたちには自分の力で文献を読み理解する力を身に付けてほしいと考えています。そのためには、子どもたちは文法も理解できるようにならないといけません。そこで、文法の第一歩として読み書きの最初の段階で子どもたちには「単数と複数」を理解してもらうことを重視しています。日本人の子どもたちにとって「単数と複数」を意識することはとても難しい。しかし、これを理解しなければ、代名詞や be 動詞、そして一般動詞に s をつけることも理解できません。ですので、のちのち、子どもたちがこれを学ぶときに困らないように、まずは単数と複数をフォニックスを通して指導していくことが私が設定する目標の一つです。
そして、もう一つの目標として、単語から単語のかたまり(チャンク)、そして文への移行をスムーズに行うことを目指すので、そのためにチャンクを理解する力をつけることです。これを 42 音を指導する最中に行っていきます。
42 音の指導中(18 音目まで)
ジョリーフォニックスは 42 音ありますが、18 音目までは「一音一文字」(s, a, t, i, p, n, c/k, e, h, r, m, d, g, o, u, l, f, b)です。まずは、18 音終了後までに子どもたちには pen, hat, kick, hut, pot など CVC(子音-母音-子音)の単語を自分の力で読めるようになってほしいと思います。最初は単語をみたら、 p—e—n とゆっくり一音ずつ発して、次第に p-e-n, pen と単語として読めるようになるのですが、ここにスムーズにいくまでには時間がかかるはず。これがある程度速くできるようになるといいですね。
これができるようになるためには、実は、日本語と英語の音の違いを理解することが重要になってきます。この 18 音を教えている段階では、子どもが英語の音素に慣れ、音素をスムーズにくっつけたり (p, e と聞いて pe と言える、o, t と聞いて ot と言える)、英単語を聞いたときに日本語のように子音に母音がくっつかない音に分解したり(pen と聞いたときに、pe-n ではなく、p-e-nと分解する)することができるようになることを目指します(*)。これは、文字を使わずに行っていきます。文字がない段階でできるようになると、文字が入ったときにつまずきが少なくなるためです。
次に、上記「目標を持とう」の一つ目の目標に関連する指導として、この 3 音単語を子どもたちに読み書きしてもらう中で、読むときに a hat ⇔ hats, a cat ⇔ cats, a dog ⇔ dogs のような単数と複数の違いをイラストを使いながら行うことが挙げられます。子どもの方から「あ、1 匹のときは a がつくんだね、たくさんいると s がつくんだね」と声が出てきます。
また、「母音を制する者が単語の読みを制す」と私は考えていますので、この 18 音目までには短い母音と母音字をしっかりと聞き、読める力をつけます。ジョリーフォニックスの母音の歌がありますので、それを一緒に歌ったり、文字を指したり、音当てクイズを行ったりします。そして、単語の中でどこに母音があるかをすぐにわかるようにする練習もします。これができるようになると、19 音目からのダイグラフが比較的スムーズになります。
以上、この段階では上記3点に重点を置いて指導に当たっています。参考になれば幸いです。
* レッスンをしていたとき、ある子が gram という単語を音素に分解するときに guram というように g のあとに u を入れていました。「ローマ字だと入れる!」とその子が言っていました。なぜ 「u が入る」と子どもが入れていたことに気が付いたかというと、私は gram と言いながら 4 本指を見せ、1 本ずつ指を触りながら g-r-a-m と子どもに発音させるからです。その時に 2 本目で r と言うところを u と発音したため、気が付いたわけです。この段階でしっかりとローマ字ではないよ、ということを説明する必要がありますし、g という音だけで一音だということを理解してもらう必要もあります。そのために↓のようなブロックを用います。
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