公立の小学校でのジョリーフォニックス指導について
「公立の小学校でのジョリーフォニックスの授業を参観して」の続きです。
2年生、3年生、6年生の授業を参観したのですが、どの子どもたちもアクションを使って音と文字の関係をとらえているということがわかりました。多感覚を使ったプログラムであるジョリーフォニックスは、『教師側が・話、アクション、音、イラスト、触覚などさまざまな方法を提示し(と言っても、非常に系統立てているため、専門の英語教師でなくてもできるのです)、子どもが自分が覚えやす方法で受け止める』というところが子どもにとってやさしいと言われるゆえんです(詳しくは神戸山手短期大学の村上先生も述べられている「学習障害と英語指導を考える」をご覧ください)。
これを考えると、年齢に関係なく文字を見て音を発するということがきちんとできています。日本語にない音素の定着を図るという点では、公立の小学校で十分、指導できるなぁと感じました。
が、課題はこの先。
1)文字指導
文科省の通達で現段階では「小学校では文字を教えない」ということになっているため、先生方も文字をどこまで指導していくのか躊躇しているようです。
2年生の授業では、先生がお話を読み、その後子どもたちとそら書きをする程度の文字指導をしていました。その後、wet, west というブレンディングも。
3年生ではもう少し先に進み、聞いた単語を文字で表す「セグメンティング(ディクテイション)」も行いました。
大人が思うよりも子どもたちは文字を抵抗なく受け入れ、自分で読んでいくんですよね。逆に、文字を入れることでより子どもたちの英語に対するモチベーションが上がるということがわかります(子どもの感想より)。
6年生の授業では残念ながら文字の指導がなく、そのためブレンディングがうまくできないというところが課題として上がっていました。中学校に入る前に、できれば(ローマ字は習っているので)文字指導を行い、簡単な3文字単語が読めるところまで育てておくと、中学校への接続が楽になる、というのが中学校の先生のご意見。
2年生の子どもたちも同様に、どうやってブレンディングをしていいのか、ということが課題となりました。
今回、2年生の先生に伝えてきたのは
アクションを使って「耳からのブレンディング」を取り入れることです。
具体的には
①教師が1アクションを行い、児童がその音を1回言う
②教師が2アクションを行い、児童がその音を連続して言う⇒速く言えるようにし、単語として成り立つことを伝える
③教師が3アクションを行い、児童が同様にして単語として音をつなげる
ことを行うようにします。実際、2年生のレッスンの後、少し時間があったので、子どもたちに行ったところ、上手に「耳からのブレンディング」を行っていました。
これを文字につなげていけると一番いいんですが・・・。
2)先生方の異動
残念ながら、今年ジョリーフォニックスを教えても、翌年には学年が変わってしまったり、違う学校へ移動になったりしてしまうのが公立の学校。この引継ぎをいかに行うかが大きなポイントとなります。
ジョリーフォニックスを教えること自体は、難しくなく、英語が専門でない小学校の先生も上手に教えられるのです。ただし、「シンセティック・フォニックスとは何か」がわかっていれば、という条件付き。
そこで、まずは学校での研修を毎年行うことが大切だと感じました。しかし、先生方もお忙しいので、それができないのであれば、きちんと先生方に理解していただける「指導書」が必要になるということです。それもビデオ付きで。
3)長母音
日本人にとって難しい英語の音がai, oa などの長母音。aiという音は日本語では「エ・イ」、oaという音は「オ・ウ」という拍でとらえてしまうため、本来なら1拍(という表現はよくないのですが)のところ、日本人は2拍でとらえてしまうこと。そして、エィという音をエー、オゥという音をオーと伸ばしてしまうことです(詳しくは私のトレーニングで説明します!ネイティブの先生が毎回、「だから日本人はこれが聞き取れないんだ!」とすごく納得してくださいます)。
また、ngという音も日本人はどうしても「ン・グ」と2拍でとらえがちですが、これもngで一つの音。こうした音の違いを理解しておかないと、確かに先生たちが教えていくというのは難しいのかもしれません。
が、ここを避けて通れないのがフォニックス指導と音指導。逆にこれをきちんと理解したら、日本人の英語の力(リスニングとスピーキング)は上がるだろうなぁと、今回の研修で感じました。
まとめ
今回、私自身、子どもたちに音素が定着しているかどうかを見ることが一つの目的でした。この点はクリアできたと思っています。というのは、両校とも先生方に研修を行っているため、これがうまくいったのでしょう。逆に言えば、研修なくいきなり「ジョリーフォニックスを教えてください」というのは無理な話。ブレンディングも然り。
また、ジョリーフォニックスはアクションだけではないということも理解いただきました。これをよく勘違いされる方がいらっしゃいますが、多感覚を用いたということをしっかり理解してほしいということ(上記「学習障害と英語指導を考える」をご覧ください)。アクションは文字と音を覚えるための一つの手段であり、これ以外にもお話で覚えられる子やイラストで覚えられる子もいるのです。今回の研修でもこの点が上がっていました。
中学校の英語の先生との話では、今の時点では中学校でジョリーフォニックスを導入した学年とそうでない学年とでは、単語を綴る・読むという点で大きな差が見られ、ジョリーフォニックスを導入するメリットは十分にあるということでした。この結果をどんどん提示し、シンセティック・フォニックス指導の効果を見ていただかなければいけないと思っています。
「やはり日本語でジョリーフォニックスの指導書を作らなくては!それも日本人に合った方法で。」と決意しました。これに関してはジョリーラーニング社にもしっかりと話をしましたよ。どうにかして、日本人にあった指導書を作成したい!(こういうものを織り込んでほしいという要望があったら、以下のフォームから日本語でお伝えください~。)
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