発音はアメリカ英語?イギリス英語?
私のところにくださる質問で多いのが、
ジョリーフォニックスを教えるのに、アメリカ英語かイギリス英語かどちらの方がいいですか?
という質問です。
今回は、ジョリーフォニックス教材に関しては触れずに、まずはアメリカ英語とイギリス英語についてお話したいと思います。
私は日本にいた時はアメリカ英語にあこがれていました。というか、「英語」=「アメリカで話されている言語」という認識でした。実際には中学や高校のころはイギリス英語やアメリカ英語の違いがあるなんて知りもしなかったし、イギリスに来るまで「イギリス英語」というものがあること自体、知らなかったのです。
それが、イギリスへ来たら、まず今まで日本で習った英単語(例:秋はfallではなくautumn)や綴り(例:centerとcentre)が違うことに気が付き、言い回し(例:Do you have ~?よりもイギリスでは Have you got ~?)や文法も違うことを知り、そして発音が違うことに気が付いたんです(発音が最後というあたり、いかに耳から入っていなかったか:苦笑)。
ということは、中学校で習った英語がアメリカ英語ということになるので、日本にいたら英語=アメリカ英語が普通なのかな、と感じます。(一時帰国した時に教え子に会ったら(当時中学1年生)、「先生、イギリスって何語が話されてるの?」と質問されました。笑いながら「英語って英語でなんていう?」と言ったら、子どもたちが「English・・・England!・・・え~~~?イギリスって英語話すんだ!」と驚いていました。子どもにしてみたらイギリス英語もアメリカ英語もないんですよね。)
さて、フォニックスを教える際、発音が大きなポイントにもなるので、発音と言う点でイギリスへ来て感じたことと言えば・・・
イギリス英語の発音の方が日本人には習得しやすいということ!
渡英する前に英語が得意だったとか、ある程度英語が話せたという人は別ですが、「日本では英語が苦手だった」「apple の a の発音ができなかった(私もその一人)」「自分の人生で英語を使うなんて思っていなかった」という人は口をそろえて「イギリス英語の方が発音しやすい」と言います。
これは私の視点ですが、イギリス英語の方が一つ一つの音が鋭くはっきりした感じがします。アメリカ英語の方が丸いというか(私にはアメリカ英語が名古屋弁のように「みゃぁ、みゃぁ」言っているように聞こえます)。日本人が苦手な「ア」と聞こえる音 a, o, u を例に挙げてみてみます。(以下写真は、Jolly Learning 社からの映像 Jolly Phonics 42 Letter Sounds アメリカ英語 イギリス英語)
a の音
アメリカ英語では e の口から下あごを落として「ア」と発音。
イギリス英語では e の口をまるくするつもりで「ア」と発音。
o の音
アメリカ英語の方は「口を縦に開いて(指3本分と言うらしい)「オ」と発音します。
イギリス英語では日本語の「オ」の発音とほぼ同じです。
u の音
アメリカ英語もイギリス英語も似ていますね。日本語の「あ」に近い感じですね。子ども曰く「a と比べると下に落ちる音」だそうです。
多くの日本人がこの3つのアメリカ英語の音がすべて「あ」に聞こえてしまうということ。イギリス英語では a と u の違いがよくわからないけれど、o の違いは聞き取れます。(ジョリーフォニックストレーニングでは、この a と u の違いをしっかりと練習していただきますよ~。顔中の筋肉を使うことを体験してもらいます。アンチエイジング!) これだけでもイギリス英語の方が日本語に近いように感じます。
さて。前置きが長くなりましたが、アメリカ英語とイギリス英語のどちらを教えるかということ。
答えは「どちらでもいいのでは」です。
私自身、一つ一つの音はイギリス英語ですが、文章を話す時全体の英語の発音はきれいではなく、「日本人の英語」になっています。アクセントやイントネーション、そして英語独特の間の取り方など、私にはなかなか習得できません。結局、私が話す英語は日本語のアクセントが抜けない英語です。私が自分の英語にコンプレックスを持っていることを同僚に言うと「それがどうしたの?」と言われます。「ちゃんと英語を話して、コミュニケーションが取れていて、それ以上、何を望むの?」と。インド人の同僚も同じく、インドのアクセントが強いし、Wednesdayという単語は「ウェッドネズディ」と発音してしまっていても、ちゃんと通じている。
先週、自分が勤めている学校の子どもたちの母国語に関して調べていたところ、48%の子どもは母国語が英語ではなく、19か国語が話されているということがわかりました。子どもたちは学校で英語を習得するので、イギリス英語を話しますが(と言っても母国語の音ある程度残る)、親たちは自分の言語がほとんど抜けない英語を話します。でも、みんな通じています。
世界で英語が話されているわけですが、非英語話者が話す英語というのが今はかなり増えてきています(データが見つからずごめんなさい)。アジアでもシンガポールやマレーシアでは英語が公用語となっています。でも、彼らの話す英語はやはり母国語の音に引きずられています。また、私がイギリスの大学院で学んでいた時は、クラスの半分以上は非英語話者でした。中国やブルネイ、インド、フランス、トルコ・・・みんなが話す英語は母国語の音が強く残っていたのですが、ちゃんと通じていました。また、ジョリーフォニックスの世界会議でも確かに、いろんな国から集まったトレーナーさんたちのほとんどは、母国語の強い英語を話していました。もちろん、みんな通じます。そして、私の日本語英語もちゃんと聞いてくれ、会話になっていました。
私がつくばや大阪の学校で子どもたちに話をしたのが「英語にも方言がある」ということ。子どもたちは素直に「だから違うんだ」って感想を言ってました。そして、それを受け入れていきます。そう、アメリカ英語もイギリス英語もオーストラリアの英語も「方言」なんです。イギリス人が話す英語だけをとっても、イギリス国内の北と南では全く発音が違っています。北では u の音を「ウ」に近く発音するため、bus は「ブス」と聞こえます(苦笑)。(なので、bus stop は「ブス ストップ」って言われているような気になります・・・。)また、スコットランドの英語になると、イギリス人の中でも?となる発音だってあります。でも、これもネイティブが話すイギリス英語。アメリカ国内でも北部と南部とでは発音が違うそうです。ハワイも発音が違いますよね。
これからの時代、「イギリス英語でもアメリカ英語でもない英語」がある意味本当の「世界言語」となっていきます。日本語の音が残る英語でもちゃんと通じるようになっていくし、私はそれでいいと思っています(ただし、日本語の音の特徴である母音と子音の関係を理解しておかないと通じません。私のジョリーフォニックストレーニングではここをしっかり理解していただきます)。また、いろんな発音を子どもに聞かせていくことも必要だと思っています。
発音と言う点で大切なのは・・・
・基礎の基礎、単語を分解した時の一つ一つの音がきちんと言えること。
日本語にない音を最初に学ぶことで理解してもらえる英語の音が習得できます。また、最初にきちんと口を開くことや舌を動かすことを学ぶことで、英語の音が出しやすくなります。また、聞き取りもできるようになっていきます。
結局、「アメリカ英語」「イギリス英語」は教える人の好みになってくると思います。これをご理解いただいて、教材を選んでいただければいいのでは・・と思っています。ただし、ジョリーフォニックスで教える場合は、教材の中身が少しずつ違っているので、それをきちんとお話しなくては、と思っています。教材の違いに関しては、また改めてお知らせします。
*発音とは関係なく大切なのは
・自分の言いたいことをしっかり伝える力を持つこと。これは普段、日本語を話すときから意識しなければいけません。いきなり英語で自分の意見が言えるようになるかと言ったら無理です。
・聞き返されてもめげずに伝えようとする強さを持つこと。日本人は「Pardon?」と聞き返されると、いきなり口ごもってしまいます。(間違えることは恥ずかしいという文化が背景にあるからでしょうか。)
・基本文法をきちんと学ぶこと。基礎ができていなかったら、その上に積み重ねていくこと=応用ができません。
・相手を尊重して話すということ。これに関してはこちらを。
そうそう、東大の入試のリスニング問題はイギリス英語だそうです。センター試験はニュートラルなどちらかというとアメリカ英語。でもイギリス英語も入っています。
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