ORT の Kipper シリーズと Floppy’s Phonics
さて、前回「ORT の Biff はなぜ Biff と呼ばれているのか?」では Biff の名前の秘密?を紹介しました。
今回は、まず、ORT のこのシリーズ本についてちょっとだけ紹介します。日本でも大人気の ORT のシリーズ。これ、何シリーズと言うんでしょう?ここでは「Kipper シリーズ」としておきます。
実はこの Kipper シリーズ、一昔前の英単語の読み書きの指導法「Whole-language」(単語は暗記するもの)という考えに基づいている本なので、いきなり、said, everyone, who, what, go などという「暗記しなければいけない単語」がわんさか出てきます。
しかし、2007 年に教育省が Letters and Sounds(クリックしてイギリス政府の当該公式ページへ) というシンセティック・フォニックスの指導書を発刊し、イギリスではシンセティック・フォニックスを指導するようになり、そのため、各小学校でもいろいろな教材が導入され、ORT の Floppy’s Phonics も読み物の一つとして導入されるようになりました。
子どもたちに自分で正しく読み書きができる力をつけるということ。そして、「暗記する(部分が含まれている)単語」は「暗記する(部分が含まれている)単語」として覚えるようにする(イギリスでは Tricky words、アメリカでは Sight words)。暗記には限界があり、子どもたちにやさしい方法としてシンセティック・フォニックス(synthetic phonics)が導入されるようになりました。
さてさて。私が持っている ORT の本はこちら。
中身は Kipper シリーズが 24 冊、Floppy’s Phonics が 24 冊。
この2種類を比べてみます。
著作権の問題でモザイクをかけてありますのでまったくわからないと思いますが、上が Floppy’s Phonics。下が Kipper シリーズ。両方とも Level 1 です。
Floppy’s Phonics には「A dog is a pet. The dog is wet.」と書かれています。こちらの本では、「一文字につき一つの音」と、ひらがなを指導するようにアルファベット文字と一音をきちんと教えていくため(a は「ア」という読み方のみを教え、「エィ」という読み方は後ほど教える)、既習した文字で読める文ばかりを載せています。これで、子どもたちは学習した文字で初めて見る単語も読んでいくことができるのです。
これに対して、従来の Kipper シリーズでは「Kipper… and a spaceman.」と書かれています。テントの中にいる人のことを spaceman と言っていますが、これ、子どもが初見で読めると思いますか?英語話者であれば、絵を見て、spaceman だと「予想」が付き、最初の 2 文字 sp や man という音で予想があっているということがわかります。しかし、英語話者でない子どもにとったら、spaceman という言葉もなかなか予想がつきません。結局、「読めない」ので「覚えなさい」となってしまいます。また、たとえフォニックスを習っていたとしても、space という単語は、フォニックスを習った子どもは「スパケ」と発音してしまいます。magic e のルールも、c という音が「s」という音になるということもまだ習っていないためです。せっかくフォニックスを習っても読めない・・・子どもの中には自信を無くしてしまう子もいます。
こんなこともあり、イギリスで必須となったシンセティック・フォニックスに対応するために、ORT からも Floppy’s Pohnics が発売されたのです。
さて。
ここでいうフォニックスというのは、Synthetis Phonics(シンセティック・フォニックス)のことで、日本で主流になているフォニックスとは別のものです。日本ではまだまだ知られていないこのシンセティック・フォニックス。中学校の英語の先生や、英語教室のベテランの先生の中にも、まだこのフォニックスについてご存じない方もたくさんいらっしゃるくらい、まだまだ馴染みのないフォニックスです。
今までのフォニックス、また、現在の日本ではフォニックスは「英語学習のまとめ」として学ぶように位置づけられているようですが、シンセティック・フォニックスはまったく違い、「英語の読み書き学習の最初」に学ぶのです。英語が全くできない子どもに最適なフォニックスです。シンセティック・フォニックスは英語の文字一つに必ず「一つの音」があることを学習し、文字を習ったらすぐに読み書きにつなげていくフォニックスです。ひらがなを学ぶ課程とよく似ています。また、今までのフォニックスと違うのが a,b,c 順に教えるのではなく、また、 ai, ie, ch, th など二文字で一つの音を作るダイグラフも早い段階で学びます。前回の記事にも書いた f と th の音の違いなどもしっかりと学びます。
<ジョリーフォニックストレーニングのお知らせ>
Floppy’s Phonics ではなく、ジョリーフォニックスのトレーナーの私。
私のジョリーフォニックスのトレーニングでは f と th の違いをどう認識していったらいいのか、a の音と u の音の違い、日本人の子どもが間違えやすい音と綴りもきちんと伝えていっています。特に日本語にはない音は意識して使わなければ、なかなか習得できません。顔の筋肉をフルに使って(みなさん、「顔が痛い!」と言われます)、発音と綴りの関係をも習得してください。
私はイギリスに住んでいるため、私のジョリーフォニックストレーニングに参加していただけるのは、1 年に 4,5 回くらいの機会しかありません。
・英語教室でフォニックスを教えたいと思っている英語教室の講師さん
・小学校で子どもたちにわかりやすいようにフォニックスを教えたいと思っている先生
・子どもにどうやって英語の読み書きを教えていったらいいのかと思われている親御さん
・また、自分の発音を矯正したいと思っている大人の方!
興味のある人みんな、トレーニングにいらしてください。次回は 2014 年 12 月 20 日(土)から 28 日(日)の 9 日間で、東京、横浜、名古屋、大阪で開催予定です。大まかな来年度の予定はまたお知らせしますね!
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