ジョリーフォニックスは読み書き困難をもつ日本の子どもに有効か:2016年夏(3)

ジョリーフォニックスは読み書き困難をもつ日本の子どもに有効か:2016年夏(2) の続きです。どんなことに気を付けて指導していったらいいのかを、考えていきます。これは、何も読み書き困難を持つ子どもだけではなく、すべての子どもたちにつながるものですので、ジョリーフォニックスを教えてみえる人、また教えてみたいと思う方への参考になればと思います。

その1:ジョリーフォニックスの「多感覚」ということを理解すること。

子ども(だけでなく大人も)には、何かを覚えるには、自分にとって印象に残りやすい部分とそうでない部分があると思います。
私を例にすると、
 印象に残りやすい部分:色・絵・動き・擬音語・(短い)話
 印象に残りにくい部分:歌・聞くこと
です。また、私は英語の単語なども耳で聞いたものをリピートすることも苦手で、耳からの情報ではよほど印象に残るエピソードが伴わないと記憶に残りづらいです。しかし、単語をカタカナ語や文字表記してもらうと、記憶に残ります。(中学校の英語の授業で一番苦手だったのがLL教室といい、ヘッドフォンを付けて音声をひたすら聞く授業。)

つまり、私のような子どもには、CDからだけの英語のシャワーだけでは英単語が入りにくいので、同時に絵や動きをつけてもらえると記憶に残るのです。これは私の例ですが、逆に耳からの情報がどんどん入っていく子どももいますし、歌で入る子、体を動かしながら記憶が定着する子もいます。

一つの授業がこうした個々の「定着しやすい部分」に触れるようになっていれば、子どもは自分に入る部分を自然と使い、定着していく(記憶に残りやすい)ということです。

ジョリーフォニックスは、たった一つの文字と音の関係を教えるために、この「子どもの記憶に残りやすい部分」をふんだんに使っていることが特徴です。
a という文字を見て「ア」と発音させれば、それで「文字と音の関係」を指導したことになりますが、これをするために、
 お話、絵、文化、アクション、文字触り、空書き、歌、・・・
など、いろいろな刺激を与えて、子どもの記憶に残るようになっているのです。まずは、この「多感覚」がどこで用いられているか、目の前にいる子どもたちが、どれを得意とするか、と理解することが一つ大切なことです。

こちら、Sakasayo先生のブログから。このお子さんはジョリーフォニックスの絵とお話が印象に残ったんでしょうね。これによって、この子には d という音と文字がつながる回路がひとつ増えたんですね。(余談ですが、2016年4月からジョリーフォニックスをクラスに導入してくださっているSakasayo先生が、8月にお会いした時に、子どもたちの文字の定着がものすごくよく、おまけに発音までよくなっている!とおっしゃってくださいました。うれしいですね。)

こども・英語・絵本・旅行・Yummy のSakasayo先生のブログより

こども・英語・絵本・旅行・Yummy のSakasayo先生のブログより

その2:文字と音の関係を指導したら、子どもたちに使わせること。

多くのフォニックス教材では、a-z を指導していきますが、その間、その文字を使って単語を読み書きさせることがほとんどないようです。記憶力が低い子どもは、これでは、一度習ったものも定着せずに忘れてしまいます。

ジョリーフォニックスでは、習った文字をすぐに使えるようにしていきます。つまり、3文字習ったら、その3文字でできる単語を読んだり書いたりするのです。これは、反復練習にもなり、定着を促します。特に読み書き困難がある子どもたちには、この「反復練習」が非常に大切です。

ただし、大切なこと。

読むときには、二文字、三文字、四文字・・・とだんだん文字の数を増やしていくこと。
例: at, sip, pram, stamp というように。4文字になったとたん、読めなくなれば、そこが何らかの困難になるわけなので、そこを克服できるように指導するほうも考える。

書くときには、何度も単語を書かせないこと。よく、間違えた単語を10回書かせたりしますが、こんなことは絶対にしないように。1回だけでいいので、音を確認させながら(自分で言わせながら)書くように伝えていきます。また、紙と鉛筆ではなく、ホワイトボードの方が単語を書くときにはいいようです。

読み書き困難のある小5児童が書いた単語。

読み書き困難のある小5児童が書いた単語。4時間ほど(日数はとびとびで)でこれだけ書けました。

その3:理由を説明すること。

読み書き困難を持っている子どもたちだけでなく、子どもは大人が思っているよりも理解しているということ。「なぜ」という部分を教えてあげると、それを理解し、ちゃんと使うことができるようになっています。それがないと、「暗記」になってしまい、暗記が苦手な子どもには非常につらいのです。

例えば、c, k, ck の違い。いつ、ck を使うのか説明すると、記憶に残るようで、ちゃんと使い分けられます。これと同様に、ひっかけ単語 (Tricky words, Sight words) もどの部分が tricky なのかを見ていくといいでしょう。

英語を教えている先生の多くは「暗記が得意」な方が多いように感じます。ですので、子どもが暗記できないと「なんで覚えられないの?」と不思議に思う方もいらっしゃるのでは・・・?人には記憶できる容量というものがあり、みんなその量が同じではありません。中にはその器が小さい子どももいますし、大きい子どももいます。

暗記できないけれど、理解する力が長けているのなら、それを上手に使ってあげましょう。ジョリーフォニックスでは、こうした「理由」もちゃんとあり、私が見ている読み書き困難を持つ子どもたちも、それでルールを理解していき、実際に読んだり書いたりできるようになっています。

 


今回、書いていて、こんなところで躓いていたのが、できるようになったなぁ、私のアドバイスが適切でなく、混乱させてしまったなぁ、と、、いろいろな子どもたちの顔が浮かびました。私も、子どもたちに日々勉強させてもらってるなぁ、と子どもたちに感謝です。

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