シンセティック・フォニックス (2) :二つのフォニックス

前回、簡単にフォニックスには synthetic phonics (シンセティック・フォニックス)analytic phonics (アナリティック・フォニックス) があると説明しました。

従来のアナリティック・フォニックスでは、ある程度の単語を知っていないといけません。
まず、man という言葉を知っているということを前提に、m と同じ音の milk や mother などという単語を見せ、m という音はすべて m の文字で始まっているから、m という文字と ム (ハミングするような音) という音が同じものなんだ、というようにすべての文字の音について教えます。

また、アナリティック・フォニックスでよく用いられている Onset-and-rime (オンセット-アンド-ライム) では、韻を踏んで単語を覚えていきます。
たとえば、
cat- hat- mat- pat- fat ・・・というように、最初の文字だけを変えて、at という音は全部同じだから、at はいつも同じ読み方をするというように子どもたちは覚えていきます。
でもね、これ、日本ではどうなんでしょう?
まず、日本語は子音と母音がくっついて一つの音を作ります。(「め」はm-eというように分けて音を認識することはありません。)だから、atという音を聞き分ける(取り出す)ということは、なかなか難しいのです。例えば、 hat, mat, pat ということばはすべてatで終わっていますが、私たち日本人の音のとらえ方は ha-t, ma-t, pa-t というように子音と母音がくっついているので、まずは音が分解できるということを知るほうが、入りやすいのでは・・・と感じます。ある程度単語や音が入っている子どもにはいい方法だと思いますが、英語がほとんど入っていない子にはちょっと難しい概念だと感じます。

アナリティック・フォニックスでは多くの場合、a,b,c 順に教えていくようです。a はapple と言った場合、残りのpple の綴りはまだ習っていませんから、真似して言うことはできても、自分で読み書きすることはできません。前回も書いたように、アナリティック・フォニックスでは、ある程度、子どもが単語を知っていることを前提としているからです。
また、a は「エィ」で「ア」と言うよ、と教えていくため、子どもはaという文字を見た時に、「エィ」と読んでいいのか、「ア」と読んでいいのか、混乱してしまうこともあります。

これに対して、世界の最先端のシンセティック・フォニックスでは、一番最初に習う文字は s 。この際、「ス(空気が抜けるような音)」という音と文字だけを教え、「エス」という名前は教えません。
フラッシュカードやイラストなどを見せながら、先生が sun, snail, grass, dog, boy などいろいろと単語を言い、その単語に s の音が含まれているかどうかだけを聞いていきます。つまり、s の聞きとりができるかどうかを確認するのです。他の音に関しては、聞きとりができなくても構わないのです。
次のレッスンでは同様にして a の音と文字だけを学びます。その際も、単語に a の音が聞こえるかどうかを確認。
最初の数回は、単語を自分で読む・書くということは一切ありませんので、本当にこれで大丈夫なんだろうか・・・と思われる人もいるようですが、3回目には t という文字を導入します。この時点で初めて、at, sat という単語を二つ読み書きができるようになります。
その後で続けて p, i, n ・・・というように一つずつ習っていくたびに、自分で読めて書ける単語が次々に増えていきます。そして、6つのフォニックスを習った段階で、子どもは sit, sat, pin, it, nip, snap, spin というように何十個と言う単語を自分で読み書きができるようになるのです。

このように、全く英単語ができない状態からでも学ぶのに最適なのがシンセティック・フォニックス。このように同じフォニックスであっても学習方法が大きく違うのです。

しかし、ここで誤解しないでほしいのが、フォニックスは「読み書き」の基礎を育てるものです。ですので、フォニックスを学んだから流暢に英語が話せるようになるかというと、それはまた別の問題です。文法や単語の意味はきちんと別に教えていかなければいけません。
しかし、少なくとも、読み書きの力がつき、正しい音を学ぶことができるため、聞いた音の綴りがわかるようになるし、それによって自分でその単語を辞書で引くことができるようになります。

そして、正しい音を発音できるようになるため、たとえ文法や文章を知らなくても、単語が伝わるようになります。聞き返されることも減り、相手の言っていることも徐々にわかるようになっていきます。これ、海外で生活していて、とても大切なことだと実感。とにかく、最初は単語でいいのでコミュニケーションが取れることが大切です。あとは、ボディーラングエッジでカバーできます。その時、単語だけでも正しく伝わらないと、何度も聞き返され、めげてしまうんです・・・多くの日本人は。


 

先日、日本人の大人を対象にシンセティック・フォニックスの第一人者のジョリーフォニックスを使って、このシンセティック・フォニックスでフォニックスを教えてみました。
そうしたら、みなさん、

・とてもわかりやすい
・遊びに近い感覚
・楽しくて、次は、次は・・となる
・子どもの興味に沿う内容がちりばめられている
・わかった!と言える自信
・楽しかったという満足感
・すぅっと頭に入ってくる
・子どものときに出会いたかった
・一音ずつに絞っての授業でわかりやすい
・自信につながる学びができる
・基礎として勉強するといいなと思う
・小学校前から学んでもいいと思う
・発音と綴りがよくわかる

ともう大感激してくださいました。
そしてね、たった数分で日本人が苦手とする R と L の発音、そして日本語にはない a の音を習得してしまったのですよ。学習前と後のこれらの音の違いをお聞かせしたいくらいです。

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