「中教審諮問 英語教育の早期化焦点 国語力低下で賛否」について

学習指導要領改定の諮問を受けた中央教育審議会(中教審)では、英語教育の早期化が重点的に議論される。ただ国語力の低下が指摘される中、小学校での英語教育強化については賛否両論があるのも事実。専門家からは「これまでの学校教育で子供たちの語学力向上が実現できていない」との指摘も上がっており、中教審はより効果的な方策を導き出す課題を抱えている。

英語教育の早期化などを求める背景には、社会のあらゆる分野でグローバル化が進む中、国民の英語能力を高めなければ国際競争に勝ち残れないとの判断がある。下村博文文科相は諮問にあたり、「受験英語からコミュニケーション英語への大きな転換となる」との考えを示していた。

だが、国語力の低下が問題視される現状では反対論も根強く、民間有識者でつくる「教育再生をすすめる全国連絡協議会」は昨年、下村文科相に対し、賛否両論を含めた国民世論に配慮するよう要請。グローバル人材育成教育学会長を務める小野博・福岡大客員教授(コミュニケーション科学)も「国語のできない子供は英語も伸びない。これまでも早期化が進められてきたが、効果は上がっていない」と指摘する。

一方、文科省設置の有識者会議は9月、小学5年から英語を正式教科にすることや、外国語活動の開始を現在の小5から小3へ前倒しするなどの改革案を提言しており、今回の諮問もこの提言に沿った内容だ。また、中学校では授業を原則英語で行うことなども今後の中教審で検討される。

小野教授は諮問について「ホームステイ外国人の受け入れなど学習意欲向上のための具体的な目標設定や、授業の工夫など抜本的な英語教育の見直しが条件となる」と話している。
産経新聞 11月20日(木)12時18分配信

小学校での英語教育早期化についてですが、私は基本的に賛成の立場にいます。しかし、現在日本で行われている英語教育に関してはいくつか疑問に思う点があり、今回のこのニュースでも、以下の点について、自分なりに考えました。

①コミュニケーション英語
まず「コミュニケーション英語」って何でしょう?そもそも、コミュニケーションって何でしょう?コミュニケーションって実際に口頭ではなくメールなどを使って意思を伝えることもコミュニケーションですよね。言葉を使わないnon-verbalのコミュニケーションが実は90%ほどを占めるという記事を以前、読んだこともあります(どの記事か忘れてしまい、引用できずごめんなさい)。読み書きもコミュニケーションの一つです。受験英語からコミュニケ―ション英語と言っていますが、受験英語=「暗記英語」のことですよね、きっと。そして、コミュニケーション英語というのは「話す・聞く」だけととらえてしまっているのではないのかしら。・・・ここのところを中教審ではどのようにとらえているのか聞きたいですね。

②国語力の低下
次に、正直に言えば、小学校で週に1回1時間、英語の授業を行ったところで、国語力は下がりません!!(私はここでは国語力というのは母国語力ととらえて話をしていきます。)子どもたちが朝起きてから寝るまで日本語に触れている時間(読む・聞く・話す・書く以外にも考える時間)が一日16時間として、一週間(7日)で112時間。その中のたった1時間英語に触れたからと言って国語力が下がるなんてあり得ません。逆にそれくらい英語での思考力やコミュニケーション力が上がるような英語の指導方法があれば知りたいです!また、異国文化に触れることで自分たちの国・言語について考えるきっかけにもなります。(私がよく使うのがジョリーフォニックスのイラストやお話!掛け算の表を見て、日本では2×1=2, 2×2=4, 2×3=6と行うのを外国では1×2=2, 2×2=4, 2×3=6というようにかける数とかけられる数が反対になることに興味を持たせます。このかけ算は言語から生まれたものなので、言語関われば算数のメソッドも変わるということを子どもたちは知ることができるんです。実際に外国で作られた本などに触れさせることで異文化を学ぶことに役に立つと思うのです。)

では、国語力が下がる原因は、母国語を習得する大切な時期に母国語を十分に与えられないことにあると私は思っています。(もちろんほかにも原因はあります。)私たち人間は感情や環境とともに言語を習得していきます。うれしいという気持ちを言葉で表現できるようになるのは、生まれてきてからずっと聞いている言葉(主にお母さんの言葉)とその感情が一致したとき。「うれしい」以外にも「天にも昇る気分」「歌いたくなっちゃう」というようにいろんな表現が使われます。こうした言葉がけが国語力を作るのです。こうした基盤づくりは、小学校に入ってからではなく、それまでに成されているのです。つまり、小学校3年生前には母国語は獲得されているのです。ここで私が警鐘を鳴らしたいのは、「英語力を身につけさせたいから」といって「母国語での語り掛けをやめて、十分に使いこなせない英語で語り掛けてしまうと、母国語の習得に支障が出る」ということです。日本語でも十分に話をしている上での英語ならば大丈夫。問題にしたいのは「日本語で話す時間を削ってまで英語で話すのはどうか」ということです。ですので、この「国語力が下がる」という点に関しては、首をかしげてしまいます。母国語もできて初めて「バイリンガル」になるのです。英語は一応話せる、でも年相応の言い回しが日本語でできない・・・では本当のバイリンガルとは言えません。

③抜本的英語教育の見直し
小野博・福岡大客員教授の言葉には賛成です。母国語の大切さに関しては以前、説明した通り(子どもの英語教育について)。日本人だけでなく英語を母国語としない子どもたちを今までに何百人と見てきて、その経験から言えること。母国語がきちんとできる子は英語力も伸びていく。これは先述したように「うれしい」という言い方を違う言い回しができるか考えてみればわかります。母国語で言えなければ、英語ではとてもではないけれど言えません。早期化が成果を上げられないのは、こういうことだと思います。
ただし、ホームスティの外国人の受け入れができればそれに越したことはいいけれど、現実的には全国の小学校で行うことは無理でしょう。が、抜本的な英語教育の見直しということは必要ですので、現実的にできることを考えていく必要があるのではないかと思います。

だから・・・4技能+理解力を育てる教育
何度もこのブログでも書いているように、現在の小学校の英語指導で文字の指導がないというのもおかしいことです。その理由として
・コミュニケーションの一つとして書くこと・読むことも挙げられる
・シンセティック・フォニックスで指導していけば、ひらがなと同じように文字と音を学べるので、日本語にない音が小さいうちに正しく学べる
だからです。よく、子どもは耳がいいから聞かせればその音が出せるようになるとも言いますが、そんなことありません!英語の本場イギリスの小学校で学ぶ日本人の子どもたちを10年以上にわたってみている私が断言します!小学生になり日本語も確立してしまった子どもたちに、日本語にない音を聞いて発音してごらんと言われたって、その方法を知らなければその音は出せません!(thはd, z, s という音になってしまう。)また、私自身、日本語教育、英語教育両方とも携わっているため、英語と日本語の違いを理解し、どのように指導したら子どもたちがその音を習得していくことがいいのかを身を持って体験しているから、はっきりとそう言えます!まずは一つ一つの音をしっかり発音できるようにしましょうよ。それも楽しく!(だからジョリーフォニックスが本当にお勧めなんです!)

文章で言えないのならまずは単語だけでもいいから言ってみようと、子どもにもお母さんにも伝えています。単語でも通じた時の喜びはひとしおです!最初はその喜びを体験してもらいたいと思います。(文章であれば前後の単語・文で理解してもらえる確率が高いけれど、単語だったら、正しい音で発音しなければ通じません。)だからこそ、きちんと文字と一緒に発音も習得したらいいのに・・と常々感じています。

また、ある小学校の校長先生とお話していた時のこと。
”英語の授業だけ「もっと大きな声で!」「はい、リピートして!」「元気よく!」となってしまい、英語というのは常々ハイテンションでなければ教えられないのか疑問に思っている”
とおっしゃっていました。子どもの中には、ちゃんと文章で言えるけれど、わざわざ大きい声で言わない子だっているし、ゲームや歌ばかりで飽きてしまう子もたくさんいるとのこと。高学年になればなるほど、そういう子も増えてきます。だからこそ、4技能+理解力を育成していくことが小学校の英語教育では必要なのではないかと思うのです。なぜ文字がダメなのかわかりません。子どもって自分の思いを表現する手段として文字も使います。ひらがなを習い始めたころの子どもって、なんでも読もうとするし、書こうとします。英語だって同じなんです。子どもの発達段階・言語習得段階というものを「英語」となると無視してしまうのはなぜなのでしょう。小学校高学年に文字抜きで英語を教えるのも無理があると思います。もちろん、文字だけの指導をすればいいということではありません。4技能+理解力をバランスよく行っていくことが大切なんです。
そういう英語教育になっていくことを願っています。
(私の専門で言わせてもらえば、ディスレクシアを持つ子どもたちにもシンセティック・フォニックスだったら、少しずつでも英語の習得に役に立つのです。特にジョリーフォニックスは子どもにも指導者にもとてもやさしい教材で、本当に読み書きの手助けになるんです!)

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