第4回ジョリーフォニックス勉強会まとめ
2018年 8月 26日に第4回ジョリーフォニックス勉強会を開催し、たくさんの方にいらしていただきました。ご発表いただいた先生方、本当にありがとうございました。
午前の部では最初に私が特に「音源」を中心にティーチャーズブックの授業の流れについて説明しました。音源を使ってみえない方のほうが多かったのですが、ぜひ、一度、CD も聞いていただければと思います。その後は湯澤美紀先生からお話いただきました。
湯澤美紀先生のお話 「英語入門期の学びの定着ー「記憶」をてがかりに」
「クラスにこんな子どもはいませんか?」という問いかけから、学びを支える記憶の役割について、授業での「学び」の階層モデル小貫 (2013) を用いて、理解と習得に焦点を当てて説明。そこから、ワーキングメモリについての説明が始まりました。ワーキングメモリとは、「短い時間に心の中で情報を保持し、同時に処理する脳の作業場」のこと。そして、様々なボトルを例に、個人によって趙知的な記憶への入り口が違うことを説明してくださいました。そもそも、ワーキングメモリと長期記憶の違いについて、曖昧な人も多いかもしれませんが、その違いをボトルを使って、明確にご説明くださったことで、イメージ化できました。(ボトルネックがワーキングメモリ、下の部分が長期記憶。)
次に、ワーキングメモリについての説明と長期記憶についての説明とワークがありました。特に、短期記憶モデルに着目し、それぞれジョリーフォニックスがなぜいいのか、という説明がすとん、すとんと腑に落ちるものでした。例えば、私はトレーニングで「知らない音を再生することは難しい。だから、日本人が cat と聞いても cato と最後に o がついてしまう。これは、脳の働きで仕方がないこと」と話をするのですが、今回、湯澤先生がそれを長期記憶と結びつけて話をしてくださったことが、こういうことだったんだ~と、明確になりました。
また、フォントがとても大切という話や小文字から指導するのも、視空間記憶の観点からお話があり、「だから、Jolly Phonics が特別な支援を必要とする子にもいいんだ!」という理由がはっきりしました。
最後に、ワーキングメモリの小さい子供に対する授業での支援方略もお話くださり、すぐにでも実践できるものばかりで、大変ありがたかったです。
午後は小中学校の先生方のご実践をお話いただきました。またその後は加藤茂夫先生から分析結果をご説明いただきました。
6名の先生方の実践報告
小学校での実践 3 件、中学校での実践 3 件、それぞれお話くださいました。ここでは、詳細は割愛させていただきますが、いくつか質問や課題などをまとめます。
小学校
・発音が苦手な担任がどこまで指導できるか・・・ジョリーフォニックスを知ると、担任の先生方、やってみようと、実践できる。
・ALTとの連携・・・ALT に内容を知ってもらうことは必要。
・授業時間の確保・・・公立では、これが一番むずかしいのでは?新教材 We can! も内容が多く、それをこなしていくだけで、時間がなくなってしまう。どこかで時間を取らなければならない。
・特別支援級の子どもも楽しんで授業を受ける。
・教員がジョリーフォニックスを知って、研修し、実践し、また、それを参観していく・・・という教員研修が今後必要
中学校
・小学校でジョリーフォニックスをしたとしても、中学校の先生が知らないと続かない。小中連携の必要性。
・教科書に追いつくか・・・追いつきます、と力強いお言葉がありました。42音+同音異綴りを行うことで、確かに、1学期は時間がなくなってしまうけれど、その後は、一斉に単語を読んだり、書く練習をしたりする必要がなくなり、時間短縮になる。
・生徒たちが「読める!」という思いを持ってくれることが大きい。
・支援級と通常の学級でテスト問題をシェアしていくことで、通常の学級での授業も可能。
・わかる授業で、生徒たちの暴言がなくなる。
ご発表いただいた先生方、みなさんから、「目の前にいる子どもたちを何とかしたい!」という熱い思いが伝わってくるご発表でした。ありがとうございました。
加藤茂夫先生「公立小学校でのシンセティック・フォニックスの実践結果とデータ紹介」
公立の小学校で実践したグループと実践していないグループの比較分析をしてくださいました。実践したほうのグループでは、英語だけではなく、日本語にもよい影響が出ているのでは、という結果もあり、非常に見ごたえのあるデータでした。
先生がまとめで、「発音できること(構音)が聞けること(言語知覚)につながる」「発音できること(構音)が聞けること(言語知覚)につながる」 (Walter, 2008; Wilson & Iacoboni, 2006; Meister et al., 2007; Rauschecker, Pringle, & Watkins, 2008; Callan et al., 2004; Gandour et al., 2007) の話をくださいましたが、これが前半の湯澤先生の「英語の新しい音を長期記憶に蓄える!」というお話とぴったりきました。
最後に、丈夫な建物は土台部分が重要、ということで、土台を作ることが、後の英語の伸びに重要となる」と示唆くださいました。
夏休みの最後の日曜日になった方も多くいらっしゃると思いますが、お越しくださった方に感謝申し上げます。なお、今回の勉強会の収益金は平成30年度豪雨で被害に遭われた方へ日本赤十字社を通して寄付させていただきました。ご協力をありがとうございました。
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