乾燥パスタの茹で方
2011.8.9 / 基礎情報
いきなりだけど、乾燥パスタを茹でてみましょう。もちろん、作り方に難しいところはありません。
●材料 (2 人分)
160~200g
3 リットル以上
湯の 1 %
●作り方
1. 鍋にたっぷりのお湯を沸かし、湯の1パーセントに相当する塩を加えて、再度沸騰させる。
2. 乾燥パスタをなるべくばらばらになるように入れ、茹で始める。
3. 最大火力でなるべく早く沸騰状態に戻す。沸騰したら、その後はかろうじて沸騰を保つ程度に火力を調節し続け、極力パスタには触れずに茹で上げていく。
4. 途中数回、なべ底から大きく返すようにパスタを優しくほぐす。
5. パスタが茹で上がったら、カップ一杯分の湯を取り分けておき、パスタを湯から上げる。
これだけのことなんだけど、実はものすごくいっぱいポイントが詰まっていたりします。
●ポイント
お湯はたっぷり使う
パスタを茹でるときには、たとえ 1 人分であっても最低 3 リットルのお湯を使います。湯の量が少ないと、パスタを湯に入れたときに湯の温度が下がってしまって上手く茹で上げられなかったり、パスタ同士がくっつきやすくなったりと、いろいろなトラブルの原因になってしまいます。常に多めの湯で茹でるようにしましょう。
目安として、2 人分までは 3 リットル、 以降 1 人分に付き 1 リットルずつ追加と考えると良いかもしれません。
塩を入れるタイミングは?
パスタを茹で始める時点で塩が完全に溶けていて、且つ湯が沸騰していれば良いので、最初から塩を入れておいても、沸騰してから塩を入れても、どちらでも構わないと思います。
でも、最初から塩を入れてしまうと、なべ底に塩の跡が残ってしまうし、沸騰するに従って水分が蒸発するので塩分濃度が上がってしまうかもしれませんね。
なので、
1.湯を沸騰させておいて、
2.蒸発し過ぎたら湯を足して、
3.塩を入れて再沸騰させて、
4.塩が完全に溶けたのを確認する、
という手順が良いと思います。
塩を入れる理由 1 – パスタの下味
塩味が付いてないパスタは、やっぱり味気ないものです。茹でる段階で麺にしっかりと塩味を付けておけば、ソースのほうにあまり塩を使わなくてもバランスの良い塩加減にすることが出来ます。
逆に、茹で汁に塩を入れないと、パスタの味気なさを補おうとして、ソースに塩を多量に使ってしまいがちです。結局、塩分過剰摂取になってしまうかもしれません。
塩を入れる理由 2 – 茹で上がり方の調整
塩を適量加えることで浸透圧が調整され、パスタの内部に侵入する水分が少なくなります。
細胞に含まれる塩分濃度は約 1 パーセント。(正確には 0.9 パーセントだったかも。)これくらいか、これよりやや濃い塩分を加えて茹でると、パスタ内部に適度に水分が入り込み、茹でたときの食感が適切に仕上がります。
これより塩分濃度の低いお湯であるとか、または塩を加えない湯でパスタを茹でると、パスタ内部に水分が入り込みすぎてしまって、茹で上がったパスタがぶよぶよになってしまいます。
それじゃあ、これより塩分濃度の高いお湯で茹でると?実は、パスタ内部に水が入っていかないので、妙に固めの絞まりすぎた食感のパスタに仕上がってしまいます。
塩を入れる理由 3 – ソースの塩味
殆どのパスタ料理で茹で汁をソースに加えるのですが、茹で汁内の塩分を使用して、ソースに塩味をつけることができます。これは副次的な役割なんですけどね。
火加減 1 – パスタを入れた直後は強火
パスタを湯に入れると温度が急激に下がります。湯の温度が低いと、麺はうまく茹で上がりません。
ということで、なるべく早く湯の温度を上げるためにパスタを入れた直後は最大火力にして、なるべく早く再沸騰させてください。
ちなみに、パスタを湯に入れたときに湯の温度がなるべく下がらないようにするため、なるべく多めの湯で茹でるんです。(上記ポイント 1 点目参照)
火加減 2 – 茹でている最中はぎりぎり沸騰
パスタを茹でている最中は、 軽い沸騰状態(たまに泡がボコッと出る程度)になるように火加減を調整し続けてください。この火加減が、実は大きなポイントなんです。
パスタの表面には目に見えない細かなざらつきがあって、これがあるからソースがパスタにうまく絡まるんです。ところが、グラグラ沸き立っている湯で茹でた場合、パスタの表面同士が激しく擦れあって、この細かなざらつきがなくなってしまいます。ざらつきがなくなると、ソースがパスタに絡まりにくくなってしまいます。そうすると、食べたときにパスタとソースが馴染まないということになってしまうんです。この差はシンプルなソースのパスタ(例えば、アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノなど)ほど顕著に現れます。
とはいうものの。表面のざらつきが少ないタイプのパスタの場合、この点はあまり気にする必要がありません。(パスタの種類は「ざらざらパスタとつるつるパスタ」参照。)ですから、ざらつきの少ないタイプのパスタの場合、パスタ同士がくっつかないようにするために、もう少し火力を上げたほうが良いかもしれません。
でもね。いくら火加減を弱めると言っても、最低限、沸騰状態を保つようにしてくださいね。湯の温度が低すぎると、うまく火が通りませんよ。芯が残るか、或いは外側だけ茹ですぎになるか、というような悲惨な状態になっちゃいますから。
茹で汁の用途 1 – とろみ付け
パスタの茹で汁の中には小麦粉がにじみ出ています。これをソースに入れることで、ソースにほんの少しですけど、とろみがつきます。これにより、ソースがパスタに絡みやすくなります。
茹で汁の用途 2 – 乳化用の水分
オイルの中に水分を混ぜ、ある程度の火力で継続して沸騰させると、油と水分を乳化することができます。しっかり乳化した状態のソースは美味しいのです。(人間の味覚は、個別に複数の刺激を与えるより、複数の刺激を一体化させて与えたほうが、美味しいと感じられるものだそうです。)
ところで「乳化」とは、「ある液体中に、これと溶け合わない他の液体が微粒子となって分散し、乳濁液を生成する現象」(小学館)を指します。例えば、分離したドレッシングを泡立て器を使ってよく混ぜ合わせると渾然一体となり、しばらく分離しない状態になりますが、この状態が乳化した状態の分かりやすい例です。
麺は優しくほぐす
茹でている最中に麺同士がくっつかないように、数回麺をほぐしますが、この際にも表面をなるべくこすらないように、底からやさしく返すようにしてください。
茹で上げがアル・デンテ、ではありません
パスタを茹で上げた段階でアル・デンテ(al dente イタリア語で「歯に」という意味で、髪の毛程度の芯が残る程度の茹で加減で、歯で噛み切るときに食感が残る状態)に仕上げるのではなく、皿に盛り付けた段階(食べる段階)でアル・デンテに仕上がるよう茹で加減を調整しましょう。茹で上がりの状態は、茹でている最中のパスタの端を切り、その状態で判断するのが最も失敗がありません。(袋に書いてある茹で上げ時間はあくまで目安です。)
– 基本はアル・デンテの状態の直前くらいに茹で上げ。
– 後でソースパンで加熱しながらソースに絡める場合、その分硬めに茹で上げ。
– 冷製パスタなど、後で冷やして使う場合には、やや柔らかめに茹で上げ。冷水に取ったときにパスタが締まるので、絞まったときに歯ごたえが丁度良くなるようにするためです。これも、実際に冷水にとって確認すると良いです。
– ショートパスタの場合は、アル・デンテにあまりこだわらず、芯が残らない程度にしっかり茹で上げ。
いろいろな料理本で「ショートパスタもアル・デンテに茹でる」と書かれていたりするのを目にしますが、本気なんでしょうか?粉っぽさが残ってしまって美味しくないでしょ。(勿論茹で過ぎは駄目です。)それに、ファルファッレなどのように、場所によって厚さが違うものなんて、そもそもアル・デンテなんてありえないんじゃないですか?
ホントはまだまだ細かい点があるんだけど、とりあえずこんなところで。