上手にブレンディングできない例とその対応

シンセティック・フォニックスの特徴は、単語を「丸暗記」するのではなく、一つの音に対応する文字を指導し、単語を見た時に、その文字に対応する音同士をつなげて、単語として読むように指導するところです。

例えば、hat という単語があれば、h, a, t のように一文字ずつ声に出し、h~a~t とつなげ、hat という単語にして読みます。この音と音をくっつけることを「ブレンディング」と言い、これがシンセティック・フォニックスで一番大切な技能とされています。

さて、このブレンディングですが、一度そのコツがつかめるとスムーズに単語として読むことができるのですが、みながみな、最初から簡単にできるわけではありません。日本人の子どもがひらがなを習い始めた時に、たどたどしく「あ・る・ひ、・・ある・ひ、あるひ」と読むことってありますよね。これと全く同じです。練習を重ねていき、スムーズに読めるようになるのです。

英単語をブレンディングするのも全く同じです。もちろん、日本語でもそうですが、その単語を知っているか知らないかで、その流暢さも変わることがあります。自分が読んでいる単語を知っていれば、pond という単語を p/o/n/d と読み始めて、 p~o~n~d とくっつけていき、聞いたことがある単語であれば、「あ、池の pond だ!」ときれいに読むことができます。音をくっつけると知っている単語になるということが楽しくて、どんどん単語を読むようになるようです。

では、単語を知っているネイティブの子どもたちはみな、流暢にブレンディングができるのかと言ったら、そんなことはありません。私はイギリスの小学校で働いていますが、毎年、クラスに1割近く(3,4人)の子どもがこのブレンディングが上手にできずにいます。英語話者であっても・・・です。

原因はいろいろあると思いますが、今回は、どんなふうにブレンディングをしてしまうのか、その例を紹介したいと思います。以下、C=子音V=母音を意味し、CVC 単語というのは、cat, dog, mum などのような「子音-母音-子音」でできた単語のことです。シンセティック・フォニックスで単語を読むときに、まずこれらの単語を流暢に読めるようにするのが初期の目標の一つです。ここでの事例は、すべて CVC 単語を読むときに見られるものです(CCVC, CVCC 以上の単語の場合は、また別の事例が出てきます)。

① CVC 単語を一音ずつ発音すると、最後の子音以外、全く違う単語を言う

例:sit という単語を一音ずつ発音すると、top などと言ってしまう

② CVC 単語を一音ずつ発音すると、VC の部分のみをつなげ、最初の子音を読まない

例:sit という単語を一音ずつ発音すると、it となる

③ CVC 単語を一音ずつ発音すると、最初の音以外、違う音を言う

例:hip という単語を一音ずつ発音すると、hot となる

④ 似た単語に置き換えてしまう

例:had という単語を一音ずつ読むと、hat となる
hat を mat という

⑤ 余分な音を入れてしまう

例:had という単語を一音ずつ読むと、hand となる

⑥ 全く違う単語を言う

例:bed という単語を一音ずつ読むと、cat となる

これら以外にもまだ、別の読み方をしてしまう子どももいると思いますが、以上の 6 つが、私が見ていて特によく見られる事例です。英語を母語とするイギリスであっても、こうした子どもたちに読めるようにする「特効薬」はありません。

【考えられる理由】

まず、なぜこうした読み方になってしまうかを考える必要があります。以下、参考までに私や同僚が考える原因を記しておきます。

① なぜそうなるか:最後の音のみが残ってしまうため、その音から始まる単語を想像して言ってしまう。最初の C と次の V が記憶に残らない。

・記憶の保持が難しいように思われます。そういう子は、ブレンディングだけでなく、ほかの場面でも「あれ?」と思われることがあります。

・ブレンディング自体の意味が理解できない。音の連なりをくっつけると、その単語になるということがわからない可能性もあります。

② なぜそうなるか:最初の音が記憶に残らず、VC のみが残るため、その二つを単語として言う。

・二つの音は記憶に残り、順番にブレンディングできていますが、記憶の保持が難しいように思われます。

③ なぜそうなるか:最初の音のみが残ってしまい、その音から想像して単語を作ってしまう。

・最初の音を大きく言い過ぎてしまう。

・あとから入ってくる音を記憶できない。

④⑤ なぜそうなるか:なんとなく聞いたことがある自分の知っている単語や言いやすい単語に言い換えてしまう。

・語彙が少ない子にも見られる・・・例)英語が母語でない場合

・自分が声に出して読み上げた音の連なりをうまく聞き取れない

・ライム(VC)のかたまりは英語話者にはとらえやすいかたまりなので、それを耳で聞いてそれを含む単語を言う

⑥ なぜそうなるか:絵や前後の単語などから推測して単語を作ってしまう。

・記憶の保持がかなり難しいと思われる。

【指導方法】

私たちがどのように指導していっているかを紹介したいと思います。一朝一夕にはできるようになりません。こちらも試行錯誤の毎日ですし、その子によって「つかめる」コツが違うので、本当に一例として参考になれば幸いです。

・文字のつながりが単語を作るということを理解する

⇒具体物を使って指導する。例えば、ペンを机の上に置き、pen と言いながら、p, e, n と一文字ずつ書いた付箋を順番にペンの下に置く。一つ一つの音をもう一度読み、p~e~n となるべくくっつけるようにして「音がくっつくと、単語になる」ということを理解させる。

・最初の音を保持する

⇒上記同様、具体物を使いながら文字と音の関係を見せていくが、最初の音を忘れてしまうようなら、その文字を大きく書き、発音するときも強調して読んでいく。

・CVだけでも読む練習をする

⇒pa, pe, pi, po, pu というように、子音と母音のくっつく練習をする。子どもにはあらかじめ、「意味を持たない単語だから(宇宙語)」と伝えておく。

・手や指を使って音と文字がくっつく様子を示す

⇒「単語にある一音ずつを読む=音がくっつく=単語となる」ということを理解できるように、文字が動く様子を指などで見せる。

・子どもがくっつけるコツをつかめるように、指導者がゆっくり文字を読む

⇒上のビデオの 2 回目に s~a~p というところくらいまでを言い、子どもが残りを言えるように支援する。

・聞く力を育てる

⇒音の連なりが単語になることがわからない子どももいるため、いくつか具体物を机に用意し、その最初の音だけを指導者がいい、どの具体物か子どもに取らせる。”I SPY” game ですね。

「この中で b から始まるものはどれ?」「p で始まるものはどれ?」
という感じです。

【最後に】

中には耳の聞こえが悪い子もいます。耳鼻科でチェックしたところ、音がほどんと聞こえておらず、手術した子もいるほどです。要因はいろいろあると思いますが、大切なのは、子どもによって、習得できるまでの時間も方法も違うということを、指導する側が心得ておくこと、そして強制しないように指導していくこと、同じ間違いばかりを繰り返させないことが大切だと思います。

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