ジョリーフォニックスは読み書き困難をもつ日本の子どもに有効か:2016年夏(1)

2016年8月現在では、日本で英語教育と特別支援教育についての研究や文献は、ほとんどといっていいほどありません。しかし、実際、私のトレーニングにいらっしゃる先生の多くは「今までの教え方では読み書きができない子がいる」と悩まれていらっしゃいます。また、お子さんがディスレクシアと診断されたものの、近くにそうした子どもたちに指導できる英語教室がないため、保護者の方が直接指導したいといらっしゃることもあります。

私自身、ディスレクシアについて勉強したのはイギリスにあるノッティンガム大学で特別支援教育の修士号を取得する際に、その一つのモジュール(10時間の授業+研究課題)のトピックだったときです。日本における英語指導とディスレクシアについて研究レポートを書こうと思ったのですが、ほとんど資料がないのに唖然としました。結局、自分が担当した子どもの事例を英語の文献を支えにレポートを書きました。これが2011年のこと。この後、5年経った今も、あまり日本の英語指導では読み書き困難についての指導方法は触れられていないようです。

さて、本題に戻りますが、英語圏で授業を行う際、ディスレクシアをもつ子どもたちには
Structured=系統だっていること
Multisensory=多感覚を用いていること
Cumulative=累積されていること
Phonics-based=フォニックスをベースにした授業になっていること
Overlearning=過剰学習の場を用いていること(何度もくりかえし行う)
が5つの大切な授業構成としております。(参考文献: Teaching Literacy to Learners with Dyslexia Kelly K. & Phillips S. 2011
これだけみても、ジョリーフォニックスはまさにすべてを網羅しているのです。これは英語圏に限らず、日本でも授業を行う際には、これを意識する必要があると強く思っています。

上記の中で、「フォニックスをベースにした授業」とありますが、フォニックスの中には、ジョリーフォニックスのような「シンセティック・フォニックス」と、アメリカや日本で主流になっている「アナリティック・フォニックス」があります。私はディスレクシアをもつ子どもには断然シンセティック・フォニックスで指導すべきだと考えています。その統計など数値化されたものは、また日本ではありませんが、実際、2016年夏の日本でのトレーニングでは
・英語が苦手な22名の中学1年生
・6名のディスレクシアをもつ児童・生徒
にジョリーフォニックスを用いて42音と文字の関係を指導し、子どもたちの様子とpre/postの聞き取りテストから、シンセティック・フォニックスがいいということは実感しました。

(本当は42音の後のひっかけ単語と同音異綴りも指導して初めてジョリーフォニックスが終了となるのですが、時間の都合上、今回は42音のみとなりました)。

まず、最初のグループについて。

【対象】中学1年生の夏の時点で、英語に対して苦手意識を持ってしまった生徒たち22名対象。ディスレクシアをもっているかどうかはわかりませんが、読み書き困難を持っているだろうな、と思われる生徒がちらほらいました。ほかには集中力がない生徒や、勉強が苦手な生徒も。
【時間数】一回3時間×3回の合計9時間
【教材】ジョリーフォニックス Finger Phonics, Big Book, パペット, Jolly Songs, Jolly Strips, 私が作成した生徒用テキスト(以下の写真)
【内容】最初の30分はプレテスト、フォニックスとは何か、なぜ学ぶ必要があるのか・・・という説明。その後は1時間に約1グループ(6音)ずつ指導。合計9時間。 20160728_135822_DSC_0125_NIKON D5300

【9時間終了した生徒の声】
・英語はローマ字とちがって、読んだり書いたりするうちに、英語を読んだり書いたりできるようになりました。
・中学校では一文字ずつやらないので、文字についてくわしく知ることができて、うれしかったです。
・前までは、あまり単語を読んだり書いたりすることが得意ではなかったけど、今回学習してとても分かるようになってよかったです。
・今までは読むことも書くこともできなかったけど、少しずつできるようになっていったから、これから空いている時間をつかって、やっていきたいと思った。
・前まで読めない、書けない文字ができるようになった。
・これからはにがてだった英語が大じょうぶになりそう。
・最初のときよりもすごい英語のよみ書きができるようになったので、もっとしたいです。
・読みなどが分かってすごく楽しかった。
・先生がくわしく教えてくれたので、とても分かりやすかったです。そして、単語を書いたり読めるようになったので、うれしかったです。これからの英語もがんばりたいです。
・最初に言われた「暗記が少なくなる」の意味が分かりました。今までは、学校で、日本語っぽい英語で話していたが、文字一つ一つの正しい発音が分かり、新しい単語も読めるような力を身に付けることができました。読み方があいまいだった単語を見返し、正しい発音を心がけたいと思いました。
・私は、単語を読むことがニガテだったのですが、このフォニックスの授業で読めるようになりました。

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これは、多感覚を用いていることも大いに影響しているように感じます。実際、子どもたちにジョリーフォニックス教材を用いた中で、
・イラスト
・キャラクター探し
・話
・歌
・単語を読むこと
・単語を書くこと
・アクション
・音
・パペット
・空書き
など何が印象に残ったかを聞いたところ、生徒一人ひとりいくつも選んでくれるくらい、印象に残ったようです。この印象に残るというところが定着にも結び付き、実は、これが大切なところだと私は思っています。だから、ジョリーフォニックスがディスレクシアをもつ子どもにいいというところでもあるかと思います。

こうしたデータをきちんと数値化し、なんとか発表したいと考えています。
続きはまた次回。

【カテゴリ:日本の公立学校でのジョリーフォニックス】ナビゲーション

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