2018年5月 覚書その3:成功体験を積む

 小学校で読み書き指導が少しずつ入ってきています。ここしばらく「何のために小学校で読み書きを行うんだろう・・・」とずっと自問自答しています。その答えは見つかっていませんが、1つ、今回の日本滞在で見えたものは「子どもが意欲を持って英単語を読んだり、書いたりしようとする姿勢を育てること」なのではないかということです。

 音声中心の小学校での外国語活動だったものが、中学校に入って、いきなり「文を読んだり書いたり」する活動に移っていきます。その中で、英語の不規則な綴りによって(また、ローマ字に当てはめようとしてしまうため)単語が読めず、書けず、テストでも点が取れず、英語が嫌いになっていくという中学生も多いのではないかと思います。この「英単語を見るのもいやだ」となる前に、「まずは読んでみよう」「音を頼りに書いてみよう」と思える姿勢を育てていくことが、とても重要な気がします。その姿勢を育てるのに大切だと感じていることを今日はお伝えします。

「できない、苦手な音を何度も読ませない」

 まずは英語の一音にそれぞれ文字が当てはまることを教えます。その文字が連なったかたまりを一音ずつ声に出して読むと単語というかたまりが読める(=ブレンディング)、ということを子どもに知ってもらいます(できれば聞いたことがある sit, cap, dog, hat などの単語がよい)。この音のつながりは最初はぎこちなくてもいいと私は思っています。声に出してくっつける練習を行っていくと、自然な速さで読めるようになっていきます。

 ここで注意したいのが「無理矢理読めないものを押し付けない」ことです。くっつけることが難しい音があります(p, t, k, h など)。その際、pin という単語がどうしても プィン というようになってしまいますが、それを無理矢理何度も言わせていると、嫌になるし、間違った音が身についてしまうこともあります。こういうときは、先生が子どもと一緒にさらりと言うことをお勧めします。そして、毎回のレッスンでできればその音を含む単語を読む練習していくことで、徐々に苦手な音をくっつけることに慣れていくようにしてほしいと思います。

 暗記して単語を読むのではなく、自分で初見の単語を読む練習というのはとても大切なことです。単語を見たらとりあえず読んでみる、という姿勢がシンセティック・フォニックスでは育ちます。この子たちが中学校に行くと教科書を読んでくれる、と中学校の先生方もおっしゃっています!単語を読むことを恐れません。こういう姿勢を育てていきたいですね。

聞いた単語が「書ける」喜びは成功体験から

 既習の音だけで成り立つ単語を子どもたちに書いてもらいます(ディクテーション)。この単語を書くときに cat という音が聞こえたらこれは c/a/t という三つの音で成り立っていることを子どもが自分でできるようにならなければなりません(セグメンティング)。しかし、子どもにしてみたら、今まで何となく聞いたことある単語でも文字を見たことはありません。ですので、cat と聞いて、すぐに書けるか、と言ったらそんなことないんです!
先生が、
「はい、今からいう単語を書いてください。cat,  cat
はい、次の単語は・・・」
と数回 cat と繰り返したところで、書ける子どもは数名でしょう。一斉に答え合わせをしたら、自分のプリントは間違えだらけで赤色でいっぱい・・・悲しいですよね。これでは聞いた単語を書くことが嫌になってしまい、「書いてみよう」という姿勢を育てることは難しいでしょう。

 私は、子どもがいろいろな支援を受けながらでも「自分で書けた!」という「成功体験」を持つことが重要だと思っています。そのために、教室でのディクテーションの仕方を次のように4段階にしましょう、と先生方に伝えています。

第1段階
「はい、今からいう単語を書きましょうね。 cat (間を開けて) cat」 
このときははっきりと普通より少し遅めのスピードで言う。
子どもたちの手がとまったり、?という顔をしたりしている子どもが出てきたら次の段階へ。

第2段階
「c・・・a・・・t」クラス全体を見渡しながらもう一度 「c・・・a・・・t」と言う。
このときは音が三つあるということを子どもにわかってもらうために指を3本立ててゆっくりと指を指しながら c    a    t と言う。下のイラストは sat になっていますが、どの単語も同じように分解して一本の指に一音を示していく。
*このときに、「あ!」と気が付いて、書き出す子が出てきます。たいてい、二音目がわからなくて悩んでいる子が多いようです。

第3段階
「では、アクションも一緒にやってみますね。」と言いながら
c (カスタネットをたたく真似) 
a (腕のアリを追い払う)
t (テニスボールを追う)
と、それぞれアクションをしながら音をゆっくりと言う。このとき、アクションは連続して何回も繰り返すけれど、口から出す音は1回だけ言う。(何度も ccccc とは言わないように!)
*この段階で鉛筆が動く子供が出てきます!その子たちが先生を見て、もう1回!と目で訴えてきますので、そうしたら同じことを繰り返します。なるべく音と音の間は長めに取って、その「間」に文字を書くようにさせます。

第4段階
イラストと文字が付いた Wall Frieze や stripなどを見せながら、c, a, t という。また、c カスタネット、a アリ、t テニス と言葉をつけて伝えるのもよい。
*子どもを見ながら、数回繰り返してもいいでしょう。
以下は Wall Frieze です。習ったものだけを教室の壁に貼っていくのが理想。

 壁に貼るのが難しい場合は、以下のような表を一人一つずつ持たせます。これは、私の自作教材です。子どもたちは習った音のイラストに色をつけていくことができます。そして、これを見ながらでも聞いた単語が書ければいいのです!最初の段階で子どもたちがこれを見てもいいし、最後に確認で見てもいい。大切なことは、子どもが音を文字を想起できることを支援していくことです。

42音strips縦 exampleのサムネイル

 

(イラストや文字は Jolly Phonics Resource CD より。)

子どもたちがこのどの段階でもいいので「書けた!」と思ってくれることが重要です。自分の力で書けたときの喜びは次へのやってみよう、という意欲につながります。

小学校で大切なこと

 私自身、ジョリーフォニックストレーナーになったきっかけは、子どもたちの「できた!わかる!もっとやりたい!」という顔を見たかったからです。今回、6年生のクラス(40名のクラスに3名の特別支援級の子どもたちがいるクラス)で授業をさせていただいたときが、まさにこれに直面した瞬間です。

 ジョリーフォニックスは授業の流れがとてもシンプルです。同じ流れで行くので子どもたちも安心。
1. 復習 2. お話 3. 音とアクション 4. 文字の練習 5. 音の聞き取り 6. ブレンディング 7. セグメンティング(ディクテーション) 8. 歌

 e の授業で、5. 音の聞き取り(これは文字は使わず、聞いた単語に今日の学習している音が入っているかどうかを判断する力をつける音韻意識を育てる活動)のときのことです。
「shell に e の音がある?」と私の質問に、特別支援学級の子どもが指を出して、自分で シェルと言いながら人差し指を指して「シュ(sh)」、中指を指して「エ(e)」、薬指を指して「ル(ll)」と分解し、「あった!2番目にあった!」とプリントに○をつけたんです。
「よく聞こえたね、偉いなぁ。自分で音を分けたんだね」というと、満面の笑顔でにっこり。クラスの子どもたちもにっこり。胸が熱くなった瞬間です。(もちろん、子どもたちがお互いを認めあう雰囲気ができている素晴らしい学級でした。また、担任の先生の普段の授業の様子がよくわかりました。)

 こういう姿勢を育てるのが、今後小学校で必要とされる「読み書き」なのではないかと感じています。

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 今回の3回にわたる覚書では、まだまだ伝えきれないこともたくさんあります。私自身、トレーナーとしての役目の重要さをひしひしと感じた授業でもありました。次回は夏のトレーニングや教員研修で、また新たな気付きや改善点を見つけていきたいと思います。

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